2019.12.29
深夜0時の分岐点 Vol.1深夜0時。
シンデレラの魔法が解け、現実に戻るように…
27歳。
学歴良し、勤め先良しの男女が送る夢のような日々は、27歳で現実を迎える。
若さと勢いで乗り越えられてきたものが、なんだか小難しくなってくる。
キャリアアップはどこまで目指すのか。結婚はするのか。子供は持つのか。
様々な選択肢が押し寄せてくる頃。
魔法が解けた時、彼・彼女は一体どんな選択をするのだろうか。
深夜0時。
残業後に駆け込んだ地下鉄は、頬を赤らめて会話を弾ませる男女で溢れている。年末になり、浮き足立つ世間とは対照的に、智絵美は今にも泣き出しそうだった。
広告代理店での営業5年目。同業内で転職し2社目の今、部内では中堅扱いなのに、今日も無邪気な得意先に振り回され、先輩に怒られていた。
-他業界に転職した同期たちは活躍してるのに、私は全然成長してないな...
落ち込む気を紛らわそうと、智絵美は恋人の悠人にLINEを送る。
-智絵美:仕事終わった!得意先とのゴタゴタでまた怒られちゃった-
-悠人:お疲れ〜。今日は母親と買い物行って新しいカバン買って貰った!ご飯美味しいし、実家も有休も最高-
助けを求めて連絡をしても、悠人はいつもこの調子だ。
今年1月に転職した智絵美は、配属先の部署で悠人と出会った。慶應幼稚舎出身、父は大手メーカーの役員で、その恩恵を受けてコネ入社している悠人。
実力主義で上昇志向の高い智絵美と、できるだけ楽をして成功したい悠人。辛い思いをしてまで働くなんて、きっと悠人には理解できないのだろう。
-智絵美:そっか!よかったね-
能天気な悠人へのイラつきを抑えようとする智絵美に、悠人からの返事はなかった。
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