羽田空港STORY Vol.16

2019年ヒット小説総集編:「羽田空港STORY」

利用旅客数世界屈指の大空港・羽田。

そこには、行き交う人の数だけ、ドラマがある。

日常と非日常。出会いと別れ。

胸を締め付けるほどの期待と、心がちぎれるほどの後悔と。

想いは交差し、今日もここで「誰かの人生」の風向きが、ほんの少しだけ変わるのだ。

これは、羽田空港を舞台に繰り広げられる、様々な男女のオムニバスストーリー。


2019年は、本当にありがとうございました。2019年ヒット小説総集編、「羽田空港STORY」一挙に全話おさらい!

第1話:絶対パイロットには恋しないと誓っていたのに。競争率数百倍の、女たちの争奪戦

「これだから"お仕事大好き堅物メイちゃん"は…。明日は、黄金の卵・パイロット訓練生が地上研修に投入される日じゃない。決戦の金曜日よ!今日はジムとエステと半身浴で磨き上げるの。残念ながら私は、OJT教官にはなれなかったけど…勝負はここから。じゃあね、お疲れ!」

鼻息荒くゆかりが飛び出すのを送り出した私は、きっとうつろな表情だったはず。

そう、今期のパイロット訓練生の空港業務研修で、ゆかりを始めとする多くの同僚を差し置いて、彼らのOJT教官のひとりに指名されたのは…私なのだから。

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第2話:ライバルは、職場の美女やCAたち。「市場価値最高の男」に恋した27歳グラホの、3ヶ月の戦い

「この3年間、LAX(ロサンジェルス空港のこと。パイロット訓練所に近い)に3か月に1回くらい会いに行って、貯金もすっからかんって笑ってたのに。チェックアウトしたら1か月で、CAにとられたって…」

いつもなら、ゆかりと同じように、大好きな先輩の失恋に胸を痛めるけれど。今回の話は、まるで神様からの冷たい警告のように感じられて、私は何も言葉を発することができなかった。

パイロット訓練生・神崎賢人に、教官として出会って3か月。まもなく彼も地上研修を終え、数年にわたる訓練に入る。私はもっとも恐れていた事態に陥っていた。

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第3話:肩書きを手にした途端、肉食美女たちに迫られた男。超モテるパイロットが、意外な女を選んだ理由

さすがに、自分が本当に評価されてモテている、と思うほどおめでたくはなかったけれど、はじめは悪い気はしなかった。

でもそんな風に、自分の欲望に忠実で素直な女性たちは僕には眩しすぎて、次第に、どこか違う世界の住人のように感じるようになっていった。

僕はとうの昔に、そんなふうに全身全霊で他人に何かを期待するような純粋さを失ってしまっていたから。小さな頃に父を亡くして以来、生きるのに少し必死過ぎたのだろう。

そんな僕の視界に、「あの人」だけが、くっきりと輪郭を持って浮かび上がってきたのだ。

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第4話:「CA・超美人・27歳」の三拍子揃った女。玉の輿に乗るはずが、心を奪われてしまった残念すぎる相手

「はじめまして、相本美琴です。こんなに素敵な男性に囲まれて緊張しています。よろしくお願いいたします」

はにかみながらにっこり笑うと、5人の男が息をのむのがわかった。ハイレベルで強気な港区女子に慣れきっている男性は、見た目がキレイなのに普通のOLのように謙虚で優しいっていうギャップに弱い。

今日こそ。今日こそ、キラキラでハイスぺな彼氏を作る。私には追い詰められた、のっぴきならない『事情』があるのだ。

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第5話:麗しの美人CAと、彼女いない歴31年男。まさかの出来事が起こった夜

これまで、好きになった女の子がいなかったわけじゃない。でも話しかけても話は全くといっていいほど続かず、こちらも居心地が悪く、いい思い出はひとつもない。

それなのに、美琴さんとは、ずっと前から友達だったかのように楽しく話すことができるのだ。おそらく世界が違いすぎて恋愛関係とはほど遠いからだろうと推察している。

俺は好きな子の前では固くなってしまい、洒落たセリフのひとつも出てこない。だから、もしも美琴さんに惚れていたら大変だろうと思う。こんなに楽しい時間は過ごせなくなってしまうはずだ。

俺はしみじみと己の幸運を噛みしめながら、筋トレに没頭した。

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第6話:恐怖のCAカーストに苦しむ女。超大手エアラインの美人妹に勝てない、LCC勤務の姉

「え!?そうだったの?言ってよ、私も昨日は久々に国内線でしかも千歳だったんだよ!なんだ、一緒にご飯いけたのにね」
「機長がクルー全員にご馳走してくれるっていうから、みんなでジンギスカン食べにいったの。だからどちらにせよご飯は無理だったかも」

私は何でもないことのように会話を続けたけど、本当は、ステイ先でまで紗矢との「格差」を感じたくなくて、連絡しなかっただけ。

市内で一番いいホテルに泊まるレガシー(大手)CAの妹と、狭いビジネスホテルにステイする、LCC(ローコストキャリア) CAの姉。同じCAでも、そこには深くて暗い溝があるのだ。

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第7話:初対面の美人CAに、暴言を吐いた東大ドS男。2人がまさかの場所で再会してしまった夜

「松坂海里ってば、人のことLCC、LCCって、格安女とでも言いたげに!どうせLCCよ。ステイ先はケチって幽霊ホテルのオンパレードよ。機内清掃でストッキング伝線しまくりよ!」

「ふふふ、千佳ちゃん被害妄想!でも私も、総一郎さんから『東大理Ⅲ戦隊』を紹介されて初めてお食事したとき、松坂さんにはちょっと驚いたなあ。あんな完璧な人がいるなんてねー」

「完璧!?どこがっ?性格悪すぎでしょ!…って、『東大理Ⅲ戦隊』ってなに?」

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第8話:東大卒の医師が抱えていた、意外なコンプレックス。彼が格安航空会社CAに近づいた、本当の理由とは

どうしてだろう。松阪海里の質問はまるで子供のようで、今まで誰にも言わなかったような本音が胸につかえず、するりと出てきた。そんなダサいこと。

飛行機が大好きで。制服を着て、大好きなフライトができると思うと、何年たっても高揚するなんて、そんな青臭いこと。

羨ましいな、と、松阪海里は確かにそう言った。

「俺さ、本当は医者じゃなくてエアラインパイロットになりたかったんだ」

第8話の続きはこちら

第9話:「あの超美人CAが、まさか失恋…!?」地味な人見知り女子が苛立ちを抱いたワケ

滑走路のすぐそば、当然屋外の仕事なので、夏は地獄のように暑く、冬もまた地獄のように寒い。

そんな厳しい環境では男性社員が圧倒的で、チームに女子は私一人という有様だった。

人からは心配されることもあったが、飛行機が大好きで、実を言うと密度の濃い女の子のコミュニティや人付き合いがとても苦手な私にとって、技術を磨きながら作業に打ち込めるこの仕事は天職だと思っている。

―そんな私の平穏で地味な日々が、「彼女」との出会いをきっかけに、変わっていくことになるのだ。

第9話の続きはこちら

第10話:「男は全員、美人CAが好きって思ってる?」偏見だらけの女が知った、意外な男心とは

―あ!『三上 透』さん…相本さんが好きな整備さんて、この人!?

飛行機の貨物室に荷物を搭載して戻ろうとすると、到着する飛行機の整備をするためか、待機している整備士さんが目に入った。

胸のランプパスを見ると、そこには「三上 透」とある。間違いない、相本美琴さんが片思いの末告白し、その返事を芳しくない反応で保留している男の人だ。

―よ、予想と全然違う…。

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第11話:27年生きてきて、初めてフラれた超絶美女CA。彼女を拒絶した男の本音とは

「…で、フライト終わったら、三上さんからこのLINEが入ってたんですか?」

私の声は低くなっていたと思う。相本さんは、伏し目がちにこっくりとうなずいた。行きがかり上、同じテーブルにいた三浦先輩は、聞くとはなしに黙ってお茶をすすっていた。

相本さんがカフェテリアのテーブルに置いた携帯には、こんなメッセージが表示されている。

『美琴さん。大変申し訳ないのですが、僕はあなたの気持ちに応えることはできません』

第11話の続きはこちら

第12話:31歳のモテない男が、美人CAを手に入れるため実行した最後の秘策とは

「三浦先輩、三上さんがドイツの空港に転勤するって本当ですか?」

私は、その知らせを知った翌日、ロッカーから出てきた先輩を待ち構えて話をきいた。

「ああ…悪いな藍沢。実は俺、この前三上と三人で話した時には既に知ってたんだ。お前に頼まれて三上のシフトを整備の知り合いに聞いたときに、『三上ドイツ行くんだよな』って」
「その時言ってくれれば…」
「そういうのは、俺が言うことでもないだろ」

第12話の続きはこちら

第13話:「どうしてもCAになれない…」。空港で働く26歳女の焦りが生んだ、最大の誤算とは

この仕事―インフォメーションカウンターの案内係に就いたとき、制服が可愛くて、まるでCAのよう、とちょっぴり浮かれていた。

でも今となっては毎日数百人のCAを目の当たりにし、そして世界をフライトする彼女たちを尻目に、自分はこの羽田空港の小さな箱に張り付いてるだけなんて、こんなに辛い職場はないと思う。

なぜなら私は、「CAになりたくて、なりたくて、なれないまま26になってしまった空港インフォメ女」なのだ。

第13話の続きはこちら

第14話:華やかなCAの世界よりも、男を選んだけれど…。どうしても客室乗務員になりたい女が出した答えとは

「え?それって慶太くんは、まりとは結婚する気ない、ってこと?」

親友の山田芽衣が、私の泣き顔を、まるで自分が振られたかのような動揺した表情で覗き込む。

羽田空港の屋外展望デッキは、夕暮れ時のライトアップされたランウェイを楽しむために、そぞろに人が出ている。

慶太との旅行から帰るなり、羽田のグランドスタッフとして働いている芽衣に連絡して、彼女のシフトが終わるのを待った。とても一人で、あるいは慶太といっしょに、帰る気にはなれなかったのだ。

第14話の続きはこちら

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