東京ワーママ戦線 Vol.10

“母親”としてだけでなく、1人の働く女性として輝きたい!「東京ワーママ戦線」全話総集編

ワーキングマザー。

それは働きながらも子育てをする母親の総称。

独身を謳歌するバリキャリ女子でもなければ、家で夫を待つ専業主婦でもない。

“母親”としてだけでなく、1人の働く女性としてキャリアを積みたい、と願う女性たちのことである。

だがそんな彼女たちに待ち受けるのは、試練ばかり。

青山にある商社に勤める、桐本翠(28)も、ワーキングマザーとなった1人。

数多の試練を乗り越え、母として、女性として輝くためには―?

「東京ワーママ戦線」一挙に全話おさらい!

第1話:人生「勝ち組」なはずなのに…。“幸福な妊婦”28歳女の、出産後の憂鬱

「大樹? 今タクシーで帰ってるんだけど、荷物持ちきれないからマンションの前まで来てくれない?」

慌てて返事をする夫の声を聞いて、電話を切る。妊娠が発覚してからというもの、夫の翠への対応は、まるで“お姫様扱い”だった。翠は満ち足りた気持ちで、窓に流れる東京の夜を眺めていた。

この時、東京でのこんな満足感を得られるのが最後になるとは、まさか夢にも思っていなかったのである。

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第2話:「夜のお誘いは無理…」東京で独身を謳歌していた女が、“母”として送る一通の苦悩LINE

―誰も味方がいない…。

ふとそんな気持ちが襲ってきた。実家から離れ、夫の大樹ともゆっくり話せない状況も、追い打ちをかけて翠を孤独にさせるのだった。

妊娠したときは、周囲の皆に心から祝福されていると感じた。なのに子どもを産んで社会に戻ることは、あまりにもハードルが高い。だが隣で眠る颯太の横顔を眺めていると、こう思い直すのであった。

――颯太のためだもの、こんな弱気になっちゃダメだよね。この子を幸せにして、仕事もできるように頑張ろう。

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第3話:「すっかり“お母さん”になったね」元カレからの痛烈な一言に動揺する、育休明けの28歳女

凛は同期の中でも飛びぬけて“華”を持ち、それだけで一目置かれるような存在だった。

高身長でありながら透明感のある肌と長い茶色の髪は、同性でも目を奪われるほどだが、素直すぎる物言いにたびたび周囲を困らせてしまう。

―根は嫌いじゃないのだけど・・・。

まだ独身を謳歌する凛とは人生の目指す方向性が違いすぎて、ここ2年ほどは個人的に連絡することもなかった。こんな喧嘩を売られてしまうなんて、想像もしていなかったのに。

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第4話:夫の協力で得られた、ワーママ一夜の自由。酷い仕打ちをされた元カレからの誘いに、揺れる女心

「この商品の在庫数、調べておいて。明日の会議で資料として使うことになるから」

凛は素直に健太からそれを受け取った。健太は商談に向かうのだろう、忙しそうにスーツを正してフロアを出て行った。

彼は同期の中でも群を抜いて評価が高く、誰もがその実力を認めていた。それは高飛車な凛でさえ例外ではなく、彼からの頼み事は断れないようだった。健太がいなくなると、凛はくるりと翠の方に向き直る。

「翠、今の聞いてたでしょ?」

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第5話:「キャリアを積みたい」上司に直談判したワーママが言われた驚くべき一言

―30歳も過ぎれば、会社の中で誰が期待されていて誰が期待されていないのか、その差は歴然としてくるよね・・・。

確かに翠は時短勤務で皆と同じ時間は働けない。颯太の体調不良で急に会社を抜けることもあるし、周囲にも迷惑をかけていることは自覚している。それでも「会社から認められたい」という欲がないといえば嘘になった。

そして、ちょうど15時になろうとしたときだろうか、パソコンの画面に「考課結果の掲示」が現れた。深呼吸をして、マウスでその掲示をクリックし、自分のランクを確認した―。

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第6話:「キャリアは諦めた方がいい?」悩める31歳ワーママに、先輩ママが告げたリアルな思い

「やりたいっていう気持ちは確かにあるんです。でも、それは私のわがままなんじゃないかって罪悪感もすごくあって。私の生活はもう私だけのものではないし、まず颯太のことを考えると今以上に家庭を疎かにしちゃいけないと思うんですよ。むしろ、専業主婦になることが1番なのかもしれない。そう考えると、きっとキャリアは諦めた方がいいんだなって結論にしかならなくて」

今まで押し殺してきた感情がぐっと込み上げて、翠は言葉を詰まらせた。悔しい、と思うことさえ許されないんじゃないか、そんな悲しさが身を包んでいるようだった。

絵里はそこまでひと通り聞き終えると、ひと呼吸置いてから口を開いた。

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第7話:「あなたが選ばれる訳ない」ライバル女に仄めかされた後に知る、採用面接の意外な結末

今回のプロジェクト応募を大樹に相談したところ、大樹は翠を後押ししてくれた。やりたいことを我慢するより挑戦していった方がいい、と言ってくれたのだ。

また上司である上田課長にも話をすると、こちらから応募を止めることはできないという答えだった。翠が異動することになれば、その欠員は他部署から補充されることになるらしい。

緊張を胸に、面接会場である8階の会議室に向かった。そしてそこに集まっている応募者の顔ぶれを見て、翠は思わず声を上げた。

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第8話:「ずっと、言いたかったことがある…」夫からの予想外な一言に、ベッドルームに駆け込んだ妻

「あ、おかえり・・・夕ご飯、食べるよね?」

実は、同僚と一杯だけ会社近くのダイニングバー『MASTER'S DREAM HOUSE』で飲んできてしまったため、あまりお腹は空いていない。ただこれを翠に言うときっと機嫌を悪くするから黙っていよう。そんな攻防をひとり大樹は心の内に押しとどめる。

「ありがとう。もう夜遅いから、少しだけもらうよ」

出てきたのはサラダと牛肉を焼いたもの、それにスープ。それらを手際よく並べていく翠の横顔を眺めながら、どこか調子の悪そうな様子が気にかかった。

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第9話:「中途半端でイライラする…」時短勤務の女に噛みつく、アラサー独身女に起きた悲劇とは

「俺はもう帰るから。あんまり無理すんなよ」

健太の声を聞き流し、凛は足早にフロアを出た。頭の中は新商品の売り上げのことでいっぱいになっていた。新規プロジェクトチームに配属になってからというもの、以前のような余裕はすっかり消え、数字に追いつめられる日々が続いていた。

―せっかくのチャンスなんだから、今頑張って結果を出し続けないと。

店舗に向かう電車の中でふと、iPhoneを開くと未読のLINEメッセージが何件か溜まっていることに気付き、ハッと顔を上げた。

第9話の続きはこちら

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