東京男子図鑑 Vol.1

東京男子図鑑:晴れて慶應ボーイとなった男を待ち受ける、庶民とセレブの分厚い壁

−女なんて、どうせ金を持ってる男が好きなんだろ−

そんな風に思うようになったのは、いつからだっただろう。

これは、大学入学とともに東京に住み始めた翔太の半生を振り返るお話。

東京を舞台に、金と仕事と女に奮闘しながら年齢を重ね上り詰めていった、ある東京男子のリアルな回想録である。


“慶應ボーイ”になったものの…突きつけられる、庶民とセレブの壁


慶應義塾大学入学式の日のことは、今でもよく覚えています。

新緑のイチョウ並木の下を、一張羅のスーツに身を包み歩いたあの日。僕が晴れて“慶應ボーイ”としてスタートを切ったあの日のこと。

入学式が行われる日吉記念館までの道を歩きながら、僕は早々に“彼ら”の存在に気がついていました。

初々しいといえば聞こえはいいが、はっきり言って田舎臭さの抜けない僕たちとはまるで違う空気を放つ男女が、時々颯爽と駆けていくのです。

−内部生だ。

すぐにわかりました。同い年であるはずなのに、彼らは一人前にスーツを着こなしています。しかも僕たち外部生が揃って着ている量販店のものとは違う、見るからに仕立ての良いスーツを。

男だけじゃない、女も同じです。いや、女の方がよりわかりやすかったかもしれない。

淡いパステルのセットアップを着て、どこか不安げに歩いているのは、おそらく僕と同じ大学受験組でしょう。

しかしその隙間を、ベージュのパンツスーツに美しい栗色の髪を靡かせ闊歩する女たちがいます。当たり前のようにルイ・ヴィトンを持ち、カルティエの時計を光らせて歩いているのは…内部進学のお嬢様たちに違いありません。

…住む世界が違う。

早々に気後れを感じはしましたが、一方で僕にだってプライドがあります。

千葉県浦安市で生まれ育ち、進学校として有名な公立高校から難関を突破して這い上がってきたのだという自負が。

温室育ちのお坊ちゃんたちに負けるわけにはいかないのです。

ところが入学して間もなく、僕はあっさり気づかされました。

“負けるわけにいかない”などという闘争心すら無意味であることに。

なぜなら僕たち庶民と内部生の彼らの間には、何をどう頑張っても超えられない壁が存在していたから。

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