東京シンデレラ Vol.2

東京シンデレラ:東京で素晴らしい女性になるから。素敵なカバンと、靴をください

私たちは、東京にいる限り夢を見ている。

貧しい少女にガラスの靴を差し出す王子様が現れたように、いつかは幸せになれると。

だが必ず、自分が何者でもないと気づかされる時が来る。

神戸から上京し、港区女子へと変貌を遂げる真理亜と、その生き様を見つめる彩乃。

彼女たちが描く理想像は、現実なのか、それとも幻なのか...


ずいぶん冷え込むようになった、表参道の並木通り。

私はショーウインドーの前で、かれこれ10分くらい立ち尽くしていた。

見つめる先には、約60万するシャネルの鞄があった。

頑張って働いたとしても、1ヶ月のお給料でも到底足りない。だけど、頑張ったら何とか買える気もするマトラッセ。

喉から手が出るほど欲しいのに、色々考えると買えない。

そんな虚しさを感じながら、私は『ダイニズ・テーブル』へと向かった。

真理亜が最近交際しているフォトグラファーの彼と三人で、食事をすることになっているのだ。

秋の夜風が、ビルの隙間から容赦なく私に向かって吹いてくる。タクシーでも捕まえようかと思ったが、この距離なら歩こう。

ピンヒールがジリジリと、私の足を痛めつける。


—やっぱり、1,000円くらいケチらずにタクシーに乗ればよかったかな...。


そんな後悔と共に足が痛くなってきた頃、ようやく店に着いた。それと全く同じタイミングで、颯爽とタクシーから降りてきた女性が目に入る。

「彩乃ちゃん!もしかして歩いてきたの?」

半年前に上京してきた真理亜は、ここ数ヶ月で一気に派手になった。真理亜の無神経な一言に苛立ちながらも、軽く笑顔を作る。


駆け寄ってきた真理亜からは、風と共に強いイラン イランの香りがした。


真理亜に手を引かれ、私たちは一緒に階段を降りて行く。

今考えるとこの彼こそが、東京で生きる真理亜の根源をとなった存在のような気がする。

この記事へのコメント

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No Name
もっと素直に、東京の街は素敵だと思える記事読みたいな。いろんな人がしのぎ削りながら懸命に頑張ってる、苦しい時もあるけど思いがけない優しさがある、それが東京なんじゃないかと思ってる。
2017/10/17 08:4983
No Name
40の大の大人のおじさんにもなって23のコにこんな無神経な発言する人なんて(しかも彩乃はバカな発言したわけでもなくただ聞かれたこと正直に言っただけ)、付き合ってるうちはキラキラ生活させてもらえて楽しいかもしれないけど、思いやりのかけらもない人とのキラキラ生活は長くは続かないからいちいち僻まずさっさと忘れたほーがいいよ
2017/10/17 12:4265
No Name
でも、彩乃だってこのコミュニティでステイタスを築きたくて、まりあを利用してるわけでしょ?
前回の出会いから考えて、親友とは思えないし。

あまり人のこと言えない。
2017/10/17 07:3753
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