東京男子図鑑 Vol.1

東京男子図鑑:晴れて慶應ボーイとなった男を待ち受ける、庶民とセレブの分厚い壁


「ねぇ。花純の裏の顔、教えてあげる」

僕が“それ”を知ったのは、花純の友達だという女の子からの密告です。

友達をあっさり裏切る女のあさましさを嫌悪もしましたが、それよりも密告内容が衝撃だったのです。

なんと花純は、「女子大生ブランド」を大いに利用し堪能しきっていた、いわゆるビッチでした。

バブルの残り香のような随分年上の男達と西麻布で夜な夜な飲み歩き、さらには伊豆やら箱根の高級旅館で一緒に宿泊までしていたんです。

「翔太くんが想像してるようなことは、何もないよ?」

問い詰めた僕に、彼女はしれっとそう言った。けれど、そんな言い訳は信用できません。この世のどこに、下心なく金を使う男が存在するというのか。

その時の衝撃は、裏切られた、というような感傷的な挫折ではありません。

僕だって、“最後に愛は勝つ”なんていう綺麗ごとをまさか本気で信じていたわけじゃない。

しかし僕の前ではビッチな側面などおくびも見せず、純粋無垢な淑女を気取っていた花純が、まさか裏でおじさんを相手にしていたなんて。

女は皆、羊の皮を被った狼なのだ。純情ぶった拝金主義者だ。

そんな考えが、妙にストン、と腑に落ちて来ました。

当時の僕は、就職活動にはまだ早い、けれど将来への漠然とした不安を抱いている頃でした。

未来はまだ霧の中にあって、しかし何かしなくては、何か始めなくてはと気ばかり焦り、必死で藁をつかむような日々を送っていたのです。

だからこそ、すでに出来上がった年上男に擦り寄り、甘い蜜を吸う花純のことが許せなかった。

僕が給与ランキング上位の企業に絞って就職活動を始めたのは、間違いなく花純の存在があったからです。

−拝金主義の女たちめ、今に見てろよ−

花純の一件で味わった苦い屈辱こそが、僕の原動力でした。


▶NEXT:9月21日 土曜更新予定
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