2019.07.15
人生の定点観測~東京女の就活事情~ Vol.1「厳正なる審査を行いました結果、貴殿のご希望に沿うことは出来ない形となりました。今後の貴殿のご活躍をお祈り申し上げます」
―嘘でしょ!?何かの間違い……??
英理佳の顔から、さっと血の気がひく。念のためブラウザを立ち上げ直し、もう1度ログインしたが、何度見ても結果は同じだった。
―なんで…なんでなの……?面接官の反応も、他の子よりよかったはずなのに。
もう1社の結果は、明日来る予定だった。カレンダーを見つめながら、祈るような気持ちになる。
翌日、もう一つの航空会社の二次面接結果通知の画面に表示されていたのは、昨日と同じような文言だった。
「他フィールドでの貴殿のご活躍を、心よりお祈り申し上げております。」
―………。
英理佳は絶望的な気持ちになった。
志望度が高かった客室乗務職、その大手日系航空会社のどちらにも落ちてしまった。
航空会社の二次面接の日程が重なってしまったために、辞退した会社が1つ、もう持ち駒は、明後日二次面接が行われる自動車メーカーのイベントコンパニオンしかない。
だが1週間後、自動車メーカーからまたしても「お祈り」の結果通知をもらってしまった。
―これでとうとう、持ち駒がなくなったわ…。
この信じがたい状況に愕然としたが、かといって他の就活生のように、片っ端からESを提出し直すなんて、まっぴらごめんだった。
さらに英理佳を焦らせたのは、instagramで目についた、客室乗務職の内定者懇親会の写真である。
写っていた内定者達の中だったら、誰にも負けぬ美貌を持つ英理佳にとっては、納得がいかなかった。
人生で初めて、自分が望むものから拒否された。
それは英理佳にとって受け入れがたい事実であり、葵や沙耶にはもちろん言えなかった。
◆
だがそんな英理佳に、ある転機が訪れる。
それは気分転換に新しい洋服でも買おうと銀座に寄り、その帰りの道すがらのこと。電車でネットサーフィンをしていると、1つの広告が目に留まったのだ。
それは、中東UAE、ドバイを拠点に世界各地に就航している航空会社が、日本人客室乗務員を募集しているというものであった。
―外資系の航空会社だったら、駐在じゃなくても海外に住めるし、福利厚生も抜群じゃない……!!!
直感的に「これだ」と思い、明後日が締切であったためすぐに応募した。すると「書類選考通過と面接の案内」が一週間後に届いた。
5月末、英理佳は面接会場にいた。日系とは違い外資系の航空会社は1日で最終面接まで終わらせる会社が多い。
そして同日夕方、英理佳は心地良い疲労感と共に帰路についた。元々得意である英語と、持ち前の美貌を最大限に発揮し、最終面接を終わらせたのだ。
それからさらに1週間後の昼下がり、英理佳は、自分のスマートフォン画面に「971」から始まる見慣れない番号の表示と共に、着信が入っていることに気づく。
「Hi…?」
「Congratulation! Erika, You will be a member of our team!」
それはCA受験生の間で「Golden call」と呼ばれている、採用通知電話であったのだ。
英理佳はついに、客室乗務職、それも中東ドバイを拠点とする航空会社に内定を得たのである。当初エントリーしていた5社ではない。しかし、もしかしたらそれ以上の結果であったかもしれない。
―外資のほうが全然イケてるじゃない。お給料だって高いし。
もともと海外で暮らしていた経験が長い英理佳にとって、ドバイに生活の拠点を移すことには、ほとんど不安などなかった。
「英理佳、おめでとう!!!」
親友2人に報告すると、盛大に祝ってくれた。
「ありがとう♡2人ともドバイに遊びに来てね!」
「行くよー!英理佳に会いに。そうだ私、知り合いでそこのCAやっている人いるから、英理佳に紹介しようか?」
「ありがとう!でも、ドバイに行くのは、来年の夏だって。皆がもう社会人しているのに、私は4カ月間ニートみたいなものだよー。」
そう言って、3人は笑い合った。この時、英理佳は全てを手に入れた気がしていた。
日系に全て落ちたときはプライドがズタボロになった。だが外資航空会社からの内定を得て、やはり自分は“持っている側”の人間だと確信した。
そして噂に聞く、ドバイでの客室乗務員としての華麗なる生活。自分もそれを1年半後に送れるのだという高揚感が止まらなかった。
▶Next:7月22日 月曜更新予定
中東ドバイでの、華麗なる暮らしとは?美しさと若さを兼ね備えた女の、恋愛市場価値は無限大?!
時はバブル真っ最中!大手損保会社に入社しましたが、なんと前年まで四大卒女子の採用はありませんでした。短大卒か高卒、しかも縁故採用です。
唯一、出身大学のOG訪問しても「私、縁故だから面接とかよくわからないの」と言われて、仕方なくOB訪問に切り替えました。
でも職種が違うから、結局、ランチご馳走になって終わり、みたいな日々でした。
学歴フィルターを通過出来る学校であれば、ほと...続きを見るんどの大手企業から内定もらえる時代でした。
国が「男女雇用機会均等法」を実施したばかりだから、大手企業なら国の号令に逆らえなかったんですね。
だから、エントリーシートだの、企業研究だのと、
今の若い人たちはすごいなぁ!とオバサン、心から感心しています。
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