ブラックタワー Vol.11

女の嘘にコロリと騙される、悲しき男の性。孤独な中年男を手玉にとる、魔性の女のテクニックとは

ーまるでお城みたいに、高くて真っ白な塔。私もあそこの住人の、一人になれたなら…。

ずっと遠くから眺めていた、憧れのタワーマンション。柏原奈月・32歳は、ついに念願叶ってそこに住むこととなった。
空に手が届きそうなマイホームで、夫・宏太と二人、幸せな生活を築くはずだったのに。

美しく白い塔の中には、外からは決してわからない複雑な人間関係と、彼らの真っ黒な感情が渦巻いていたー。

憧れのタワマン暮らしを始めた奈月だったが、元不倫相手が同じマンションに住んでいることに加え、差出人不明の黒い手紙が届いたりと、次々と問題が起きる。

やっと夫の本心を知ることができた奈月は、問題の元凶となったコンシェルジュ・吉岡多香子を追い出すために動き始めるが…


「今日、一緒に出ない?」

身支度中の奈月に、夫・宏太が声をかけた。いつもはすでに家を出ている時間なのに、今日は出社時間を遅らせたらしい。

曖昧に返事をしつつ、鏡に映る宏太に目を向ける。既に準備万端な夫は、こちらの様子をチラチラ伺いながら、落ち着かない様子だ。

コンシェルジュとの関係が明らかになってから、すでに1週間以上経過している。宏太が常に奈月の機嫌を伺っているような、いまいち気まずい空気の中で、夫婦間の会話はぐんと減った。

「例の、コンシェルジュとのことだけど。」

二人きりのエレベーターで、奈月が切り出した。

「あのあとすぐ、管理会社に連絡した。コンシェルジュが住民と個人的に交流していて、脅し紛いの行動をとっているって伝えたら、急いで事実関係を確認する、って。…最近シフトも入ってないようだから、動きがあったんだと思う。」

「…そうか。ごめん」

重い空気のまま、エレベーターを降りると、いつも静かなはずのエントランスが、何やら騒がしい。

「だから、いつも通りにっていってるじゃないか!」
「も、申し訳ありません」

新人らしきコンシェルジュに、なにやら男性が声を張り上げている。

―あれって…もしかして室井さん?

普段無口な隣人の思いもよらない行動に、奈月と宏太は、顔を見合わせた。

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