元・夫婦 Vol.6

「もうこれ以上、隠し通せない…」。赤の他人に暴露された、元夫婦の過去

“夫婦”

それは、病めるときも健やかなるときも…死が二人を分かつまで、愛し合うと神に誓った男女。

かつては永遠の愛を誓ったはずなのに、別れを選んだ瞬間、最も遠い存在になる。

10年前に離婚した園山美月(35)は、過去を振り切るように、仕事に没頭していた。

もう2度とあの人に会う事はないと、思っていたのに―

念願だったモデルプロダクションを立ち上げ、長年の夢をようやく掴みかけていたそのとき。

元夫との思わぬ再会に、美月は辛い過去を思い出し、苦しんでいた。

“元夫の子供”という複雑な関係ではあるが、小春を一流モデルに育てる決意をした矢先、美月に不吉な電話が掛かってきて…。


「飛行機に間に合わないって、どういうこと!?」

まるで夫婦だったころの待ち合わせのような口ぶりで、裕一郎は電話越しに「後から追いかける」と、言い出した。

「そんな簡単に言うけど、飛行機、1日に何本もないのよ?だいたい小春はどうしたのよ。彼女がいないと撮影は…。」

「いや、すまん。今小春連れて病院に来てるんだよ。夜中に急に高熱出して、点滴打たせてたんだ」

「え!?大丈夫なの?」

「もう熱は下がった。遠足前の子供と一緒だよ。よっぽど今日を楽しみにしていたんだろうな。血液検査もレントゲンも異常なし。すっかり元気だし、撮影に行くって大泣きして大変だよ」

無理しないで、お休みしてと言うことができないのがこの仕事のつらいところだ。小春の代わりはいないのだ。

心苦しくもあるが、体調に十分配慮してフォローしながら進めて行くしかない。

「この仕事に穴を開けられないのはわかるよ。今日のところは撮影ないんだろう?俺が新幹線で連れて行くから、夕方までには着く。」

「わかった。気をつけて。…あの、裕一郎、ありがとう。助かったわ。」

「ああ。じゃあまた。」

電話を切ってから、美月は大きく深呼吸をした。そして心を落ち着かせようと、ベンチに座り、タンブラーのコーヒーに口を付ける。

美月が社長としてこなす初めての大型案件であり、初めてのトラブルだ。

小春の体調が何よりも心配だが、裕一郎の言葉どおりなら、無事に快方に向かっているはず。

幸い、早朝の便で現地に向かい、現地で打ち合わせや準備にあたるつもりだった。

小春はスタッフとの簡単な顔合わせ以外、今日稼働する予定はない。夕方に着くならすべてが予定通りにいくはずだ。

裕一郎のフォローには感謝してもしきれない。こんな風に話しが通じる相手でなければ、成り立たなかっただろう。

―ありがとう、裕一郎。

美月は、現地で2人を待つと決め、飛行機に乗り込んだ。

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