元・夫婦 Vol.5

「彼は、私の元夫」。悲惨な過去を打ち明けた女に降りかかる、さらなる試練とは

“夫婦”

それは、病めるときも健やかなるときも…死が二人を分かつまで、愛し合うと神に誓った男女。

かつては永遠の愛を誓ったはずなのに、別れを選んだ瞬間、最も遠い存在になる。

10年前に離婚した園山美月(35)は、過去を振り切るように、仕事に没頭していた。

もう2度とあの人に会う事はないと、思っていたのに―


念願だったモデルプロダクションを立ち上げ、長年の夢をようやく掴みかけていたそのとき。

元夫との思わぬ再会に、美月は辛い過去を思い出し、苦しんでいた。しかし小春に手を差し伸べたことで、運命の歯車が次第に動き出す…。


―小春ちゃん、どこにいるの…?

美月は人をかき分けて竹下通りから裏道まで、スカウト待ちをしているという小春を探し回っていた。

暫く駆け回っていると、すらりと背の高い見覚えのある姿が目に入る。

しかし、小春と思しき女の子は怪しい男に促され、黒いバンに乗り込もうとしているところだった。

「小春ちゃん!!」

大きな声で名前を呼ぶと、不安そうに俯いていた少女は弾かれたように振り返り、美月の姿を確認すると目を丸くした。

「よかった、探したのよ!」

美月は思わず、小春を男たちから奪い取るように抱き寄せる。

「この子はうちの所属タレントなので、手を出さないでください!」

驚いた顔をする小春に向かって、美月は「そういうことになったの」という意味を込めて頷き、足早にその場を立ち去った。

多くの芸能人がデビューのきっかけを語るときに「原宿でスカウトされた」という通り、この場所にはマッチングのために双方が集まっている。

夢の世界に憧れる少女を言葉巧みにピックアップしていく芸能関係者たち。

しかし、ダークサイドにつながるトラップも多い。

芸能界に憧れる少女をカモにし、高額なエステや撮影料を請求したり、成人向けのグラビアに誘導されたり、たくさんの危険が潜んでいる。

両親の意向で契約を白紙に戻された小春が、焦って無茶を起こす気持ちはわかる。

しかし、中学生が親の許可なく所属できる事務所なんて、完全に“黒”だ。

―危なかった、もしこの車に小春が乗っていたかと思うと…。

想像するだけでおぞましく、足が震える。それと同時に勝手な私情で、小春から手を引こうとしていたことを申し訳なく思った。

「あなたは、今日から『Chel-sea』所属のモデルよ。お父さんもそれを望んでるわ。だからもうこんな危ない真似はしないで」

―この子がこうして自分の未来のために必死に道を切り拓こうとしているのに、私が逃げ回っているわけにはいかない。

美月は小春のために、そして自分の未来のために、強い決意をするのだった。

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