2019.05.15
元・夫婦 Vol.1“夫婦”
それは、病めるときも健やかなるときも…死が二人を分かつまで、愛し合うと神に誓った男女。
かつては永遠の愛を誓ったはずなのに、別れを選んだ瞬間、最も遠い存在になる。
10年前に離婚した園山美月(35)は、過去を振り切るように、仕事に没頭していた。
もう2度とあの人に会う事はないと、思っていたのに―
身を粉にして働いてきた。
なんて言うと大げさだし、少々悲壮感が漂うだろうか。
離婚から10年。がむしゃらに仕事に没頭してきた美月は今日、ようやく一つの夢を叶えようとしている。
「美月さん…じゃなくて、社長、ですよね、今日からは」
「なんだか照れくさいから、今まで通りで良いよ」
今日は、美月が設立したモデルプロダクションのレセプションパーティーだったのだ。パーティーをなんとか無事に終え、二人のスタッフとともに三次会を楽しんでいた。
三次会といっても、事務所での簡単な打ち上げだ。お祝いにもらったシャンパンを開け、ようやく一息吐く。
モデルプロダクション「Chel-Sea(チェルシー)」には、社長の美月のほかに二人のスタッフ、そして三人の女性モデルが所属する。まだ規模は小さいけれど、いずれは世界で活躍するモデルを多数抱えるのが目標だ。
美月は、夢に向かっての第一歩を、今日ようやく踏み出したのだ。
35歳の大きな決断についてきてくれたのは、10歳年下の里沙と和也だ。二人は、以前勤めていた大手事務所からの仲なので、社長と呼ばれるのはやはりなんだか照れ臭い。
「美月さん。質問しても良いですか?ずっと聞きたかったことがあるんです」
「なに? 今日は気分良いからなんでも答えてあげる」
「美月さんってどうして離婚したんですか?」
唐突な質問に、美月は思わず吹き出しそうになり、むせて咳き込んでしまった。
「里沙さん!そんなにストレートに聞いたら失礼だよ!」
生真面目な和也が顔を赤くして里沙を叱っていたが、それはそれで、失礼と言われるのも切ないものがある。
離婚したのはちょうど10年前。目の前の二人と同じ歳のころだ。あの頃の美月は、こんな風に笑ったり、はしゃいだことがあっただろうか、と思い返す。
「離婚の原因ね…この話長くなるけど良い?」
「今夜はとことん付き合いますよ。ね、和也」
「はい。もちろん。美月社長」
美月の言葉を待つ二人を前に、人生で最悪の時を味わったあの日の事を口にする。
「旦那の、不倫よ」
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