過去を乗り越え、仕事に打ち込んだ10年
離婚後は大手芸能事務所に入社し、海外の映画や音楽をプロモーションするという、結婚前からの夢をかなえた。
美月が手がけた案件は軒並み成功。若手女優のハリウッド進出という一大プロジェクトを成し遂げ、確固たる地位を築いた。
打ち込んできた仕事は、自分でも驚くほど順風満帆だった。
仕事に打ち込みすぎて、贅沢をする暇もなかった。気付いたときには貯金が相当額貯まり、それを頭金に代々木八幡にマンションを買った。
周りからは「若いのに、独身なのにどうして?」という顔をされたが、結婚どころか、もはや恋愛すら億劫に感じていた。
もう二度と結婚はごめん、という思いはそのまま仕事への活力になり、今日の独立起業に至ったのだ。
そして、ついに明日は社運をかけた大型契約の締結が待っている。
子役出身の話題の美少女が、「Chel-Sea」に所属するのだ。
小春、13歳。美月が立ち上げた事務所への移籍をきっかけに、本格的にモデルへと転身することになる。
日本人ばなれしたスタイル、人形のように整った顔立ち。
以前の職場で小春の存在を知ったとき、大げさではなく運命を感じた。世界で活躍できるモデルをこの手で育て上げること、それが美月の目標なのだ。
そして明日、小春が親と一緒に正式な契約を取り交わしに来る。
いつも小春は子役事務所のマネージャーと行動をともにしていたので、親と対面するのはこれが初めてだ。
母親は小春の本格的な芸能活動にはあまり良い顔をしていないと聞いている。ここで説得できなければ、これまでの根回しが全て水の泡だ。
離婚から10年経った節目の年に、美月は本当の意味での大きな一歩を踏み出していた。
この記事へのコメント
え!?お前が言える立場か!?裕一郎!!失敬な!!(笑)