2019.05.22
元・夫婦 Vol.2“夫婦”
それは、病めるときも健やかなるときも…死が二人を分かつまで、愛し合うと神に誓った男女。
かつては永遠の愛を誓ったはずなのに、別れを選んだ瞬間、最も遠い存在になる。
10年前に離婚した園山美月(35)は、過去を振り切るように、仕事に没頭していた。
もう2度とあの人に会う事はないと、思っていたのに―
念願だったモデルプロダクションを立ち上げ、長年の夢をようやく掴みかけていたそのとき。契約にやって来た子役出身のモデル小春とともに現れたのは、10年前に離婚した元夫だった…。
美月の人生を狂わせた、男の存在
―こんな形で再会することになるなんて…。
自分の元夫が、契約にやってきたモデルの父親だという現実を、美月はなかなか受け入れられずに、茫然と立ちつくすしかなかった。
「小春。この事務所と契約は出来ない」
「どうしてそんなこと言うのパパ!?」
「とにかくダメだ、帰るぞ!」
元妻である美月の姿を見て動揺し、裕一郎が引き返そうとするのも無理はない。それに状況が理解できない小春が反抗するのも、同じく当然のことだろう。
しかし、裕一郎が立ち上がり小春の手首を掴んだその瞬間、小春の「痛いよ!」という悲痛な声が響き渡る。我に返った美月は慌てて駆け寄ると、思わず突き放すようにして二人を引きはがした。
「乱暴はやめて!あなたそれでも父親!?」
美月はおびえる小春を抱き寄せ、裕一郎のことを睨みつける。
「小春ちゃん、大丈夫?痛かったね。手首があざになったら大変。和也、冷やしてあげて。ストロベリーミルクも用意しているのよ。好きでしょう?向こうで飲んでおいで」
小さな背中をさすりながら、そっと和也に目配せをして小春と応接室を出るように促す。こうして、ついに“元夫婦”は、二人きりになったのだ。
ピンと張り詰めた空気の中で、沈黙が続く。美月がじっと元夫のことを見据えていると、裕一郎は目をそらした。
「その…、悪かった」
先に沈黙を破った裕一郎は、腰に右手を当て視線を落とすと、わざとらしいくらい大きくため息を吐く。謝るときのその仕草とセリフは、10年前と少しも変わっていない。
こうやって重苦しい空気に耐えかねて先に沈黙を破るのは、いつも裕一郎の方だった。
「謝るなら、小春ちゃんに謝ってちょうだい」
「自分のことより人のことか…、相変わらずだな。しかも、ここの社長か。恐れ入るよ、本当に美月は変わらないな」
裕一郎はあきれたように少し笑ったが、美月は笑顔を返す気にはなれない。
彼の一つ一つの仕草や言葉が、もう乗り越えたと思っていた痛々しい過去の記憶を呼び戻すのだ。
駐妻は駐妻らしく、夫の帰りを静かに待つのが正解だったのなら、それは価値観が違ったとしか言いようがない。
太陽のような美月には、月のように陰から暖かく見守ってくれる人がいいね。
男女逆で言えば、出産の時に「大事な接待があるんだ。これを失敗したら大事な取引がなくなるかもしれない」なんて言われたら、大きな遺恨が残るでしょ。
バリキャリを傘に自己中してる人には、そこのところ考えて欲しい。
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