女たちの選択~その後の人生~ Vol.1

「その気になれば結婚できる」と思っていた34歳金融系OLが、婚期を逃した理由

「あの子に、勝たなきゃ」という結婚観


「30歳あたりで仕事も楽しくなってきたし、自分は結婚“できない”女じゃない。だから、中途半端な結婚はしないって思ってました」

数年前まで、美香は結婚願望を持ちながらも、特に危機感は感じていなかったようだ。

「素敵な男性は周りにたくさんいたし、出会いにも困りませんでした。会社でも、責任ある仕事をいくつか任せられるようになって…。仕事もプライベートも充実していたので、無理に結婚を決める必要を感じなかったんです」

しかしそんな中、周囲の女たちは30歳を節目にどんどん結婚を決めていったそうだ。

「20代に散々チヤホヤされて楽しく過ごした友人が、年収1,000万そこそこの手堅い男性に落ち着いていくのが不思議でならなかったですね。だいたい歴代の彼氏よりレベルが下がってるんですよ。要は、収入がね」

美香は、少しずつ早口になる。

「で、結婚した子たちの言い分はこうです。“安心と堅実が一番だから”“お金のある人は浮気するって学んだから”。でも、夫婦共働きで生活費出し合って、家事の負担まで増えるなんて、それが幸せだなんて思えなかった」

好きなときにブランドバッグひとつ買えない生活。妻という立場と引き換えに物欲を抑えることは勿論、都心から郊外に引越す女もいた。

「でも結婚すると満たされて物欲がなくなるとか、静かな場所でゆっくり暮らしたくなるとか、そんな話を聞くたびに辟易してました。言い訳がましいなって」

歪み始めた男性を見る基準


既婚女に対する美香の鬱憤は、さらにヒートアップする。

「でも、彼女たちって必死に子どもの寝顔や手作りのお弁当なんかをSNSに上げるでしょう。哀れに見えましたね。なのに、全然羨ましくもないのに“早く結婚した方がいいよ”って、馬鹿の一つ覚えみたいに忠告されて......」

既婚女に対して厳しい意見を連ねていた美香だが、そこにはきちんと理由があった。

“独身”であるがゆえ、結婚して子どもを産んだ女から当然のように見下されることが日常茶飯事だったのだ。

「子ども産めないよ、寂しい老後になるよ...とか、そんな上から目線の忠告を聞くたびに、不快になりました」

女の攻撃性は、大概は自分を守る防御策なのだろう。

そうして笑顔のまま、お互いが何とか優位に立とうとする攻撃的な会話が続いた。そして美香は決めたのだった。

「だから私、絶対に20代で結婚した子たちより良い結婚をするって、無意識に決めてたんです」

—あの子に、勝たなきゃ—

いつの間にか、美香の男性を見る基準は歪んでいた。

「年収1,500万の彼は悪くないけれど、この外見では“あの子”の夫に劣る。スタートアップ企業に携わる彼はエネルギッシュで魅力的だけれど、やはりブランド力で馬鹿にされるかも知れない...。そんな風に考えるようになったんです」

新しい出会いが訪れるたび、美香の頭には既婚女たちのせせら笑う顔が目に浮かんだのだ。

「でも、私は世間の風潮に流されて...いや、騙されたんだと思います。このご時世、女も第一線で働いて活躍すべきとか、30代は女盛りだとか。

...そんなの、嘘ばっかりなのに」

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