12星座の女たち Vol.3

12星座の女たち:「自分に嘘はつけない」。お見合いで出会った束縛男に翻弄される、29歳女の決断

人生には思いがけない出来事が、いくつも用意されている。

良いことばかりが人生ではない。

受け止めきれずに取りこぼしてしまうこともあるだろう。時には呼吸ができないほど苦しい時もある。

そんな困難に直面し、心が折れてしまいそうになった時、ほんの少しだけ背中を押してくれる存在に出会えたら、人生は好転していくのかもしれない—。

これは生まれ月の違う12星座の女たちが、ある存在をキッカケに自分を取り戻していくストーリーである。

前回は、過去の恋を引きずる“牡牛座の女”を紹介した。今回は―。


名前:浅田夏希(29歳)
誕生日:6月4日
職業:ネイルサロン経営
住居:南青山

Case.3 ふたご座の女


「夏希。ちゃんとお付き合いしてる人、いないの?」

ひと月ぶりに顔を合わせた母は、『鮨 竜介』で最後の一貫を食べ終わると早々にため息をついた。

毎月定例の、母とのランチ。

毎回母のご機嫌を損ねないよう細心の注意を払っているものの、ここ最近は不機嫌そうに「結婚」をほのめかすことが増えていた。

「仕事もいいけど、このままじゃあひとりぼっちよ?お母さん、心配だわ。」

そう言った母の目には、はっきりと失望の色が浮かんでいる。

大手メーカーの役員を務める父と、専業主婦の母。二人はいつもぴったりと息の合う完ぺきな夫婦だった。そんな両親を尊敬し、いつかは自分もそんな人生を歩むのだろうと思っていたのだが。

現実はそんなに上手くいきやしない。

夏希は数年前に親の反対を押し切って新卒で入社した商社を辞め、資格を取りネイルサロンを経営している。

マンションの一室からスタートし、1年後には表参道に店舗をオープンさせた。従業員も増えようやく経営が軌道に乗ってきたところで、恋愛に現を抜かす余裕なんて少しもなかった。

しかし、そんな夏希を両親は快く思っていない。特に母は、凝り固まった昔の価値観を変えようとはしない。今の夏希は、母にとって「出来損ない」と言っても良いのだろう。

―私だって、できるなら結婚したいわよ…。

晴海通りで母の半歩後ろを歩きながら、そんな気持ちが胸の内に渦巻く。

京橋駅にたどり着くと、母はぱっと振り返りもう一度尋ねてきた。

「本当にお付き合いしている殿方はいないのね?」

「いないわよ。悪かったわね、29歳独身で。」

母の言葉に思わず刺々しい返事を返すと、意外にもにっこりとほほ笑みこう言ったのだ。

「そう、いいのよ。それなら丁度いいと思ってね。夏希、あなたお見合いしてごらんなさいな。」

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