東京で1人暮らしを始める際、家賃の高さに目を疑う人は多いのではないだろうか?
特に23区では、狭い1Kでも10万円を超えることはザラ。収入の低い20代の若者たちは、実家暮らしを選択する者も少なくない。
家賃がかからない分、自分の好きなことにお金を使えることは、彼らにとって大きなメリットだ。
大手総合商社で働く一ノ瀬遥(28)もそのうちの一人。
仕事は完璧、また収入の大半を自分に投資できる彼女はいつも隙なく美しく、皆の憧れの的。最近は新しい彼氏もでき、全てが順風満帆…のはずだったが!?
「実家暮らしの恋」一挙に全話おさらい!
第1話:28歳の美人商社OL。周囲が絶賛する“完璧な女”の、男は知らないズボラな一面
「一ノ瀬さん、さすが!資料もよくまとまってるし、この目標が現実になれば全部一ノ瀬さんの手柄だよ」
「とんでもない。皆さんについていくので必死でしたから」
部長の褒め言葉に、遥は口角を上げて答える。頑張った分だけ跳ね返ってくるこの仕事に、遥はやりがいを感じている。
打ち合わせを終えて戻ると、18時半を回っていた。既に定時は1時間ほど過ぎている。あと一息、と遥が座り直したとき、LINEの新着メッセージに気づいた。
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第2話:「今夜も食事だけ…?」交際中の彼女を決して家に誘わない29歳男が隠し持っていた、ある秘密
「遥は、最近料理してる?…遥の作ったものも、食べてみたいな。」
その言葉に一瞬で凍り付く。
圭介は、当然のように遥が一人暮らしだと思っているようだった。たしかに初めて会ったとき、都内在住で料理もよくすると話したので、そう思ったのも無理はないのかもしれない。
突然の問いかけに、遥は恐る恐る答えた。
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第3話:キラキラOL保つため、1人暮らしで貯金ゼロ…。商社勤務の24歳女が妬む、実家暮らしの愛され美女
金曜夜の『タベルナ アンド バール イタリアーノ タ ロス』は賑わっている。平静を装えば装うほど、他の客の陽気な笑い声やざわめきの中で、強がっている自分の心がより一層浮き彫りになるのがわかった。
みなみは言葉を選びながらという様子で、遥に尋ねてきた。
「ねえ遥?実家暮らしの男子って、どうなの…?私の女友達が実家男子と付き合って、やばかったって話を聞くから。
例えば、1人暮らしの彼女の部屋にはしょっちゅう遊びに来るくせに、彼ママと同じように家事ができないと怒るとか、旅行先で荷物全然片付けないとかさ。」
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第4話:「やっぱり、あなたと一緒に住みたいの…」情緒不安定な28歳女の重い告白に、覚悟を決めた男
「遥、悪いんだけど、俺見たい店があるんだ。ちょっとでいいんだけど、この後付き合ってもらってもいいかな?」
「いいけど、珍しいね、買い物なんて。何見るの?」
気を取り直して、遥はそう言って微笑む。
「ソファ見たいんだ」
―ソ、ソファ……!?
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第5話:「あなたはどうしたいの?」両親に依存していた28歳女に突き付けられた、“自立”への問いかけ
「…やっぱり、圭介と一緒に住みたいの…」
遥の涙がおさまるのを待つ間に、長い間揺らいでいた圭介の決心は固まっていった。
遥はいつも楽しそうで、自分にとっておきの笑顔を向けてくれる。しかし、圭介は彼女の変化に段々と気付き始めていた。
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第6話:「外ヅラがいい女性ほど危険…」20代同棲カップルの僅かな綻びを見抜いた、ベテラン女子社員の本音
「おはよう、圭介♡今、朝ごはん作るね!」
「…ありがとう、遥。でも、毎日そんなに張り切らないで大丈夫だよ」
「今日は日曜日だし!それに、せっかく一緒に暮らせたんだもん、これくらいは頑張らせてよ」
「ありがとう。じゃあ食器の後片付けは俺に任せて!」
遥も圭介も、同棲の準備段階から楽しくて仕方がなく、ウキウキしていた。
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第7話:「LINEの相手は、誰…?」四六時中スマホを離さない彼女へ向けられた、男からの残酷過ぎる一言
食器洗いはもともと圭介の分担だったが、ここ最近は遥が黙ってやってくれることが続いていた。仕事に惜しみなく時間を割くタイプだった彼女が区切りをつけ、圭介の家事を多めに引き受けてくれている。圭介にとっては、とにかくありがたい事…のはずだった。
1人暮らしをしたことがない遥が、この暮らしを守るために恐らく実力以上に奮闘している。そのことに対して、最近までは感謝と愛おしさしかなかったはずなのに。
―…それなのに、このわだかまりはなんだ?
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第8話:「彼女の、どこが好きなんですか…?」24歳の後輩女が男に仕掛ける、同棲カップルを別れさせる為の策略
「へええ、きっと彼女さん、大切に大切に育てられて、両立したり、適度にうまくやったりっていうのが、苦手でいらっしゃるのかもしれないですね」
「どうした恵美理ちゃん、トゲあるぞ~」
池田が茶化す。そんなことないですよお、と恵美理は池田に微笑みかけた。
「いや正直、恵美理ちゃんの言う通りなところもある。彼女、実家で大事に大事に育てられてきて、中々ぱっと決められなかったり、寂しさが増長して思い込んじゃったりする所があるんだよね…なんだろう、キャパがない、って言うのかな…」
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第9話:「今夜だけは、彼のことを忘れたい…」険悪な同棲カップルが、それぞれに楽しむ禁断の夜
身支度を終えた遥がふと部屋を見渡すと、乱雑に散らかった部屋に柔らかな陽光が差し込んでおり、小さな塵が舞っているのが目についた。
―圭介が散らかしたパジャマとタオル。私が出したカーディガンとブランケットはソファの上に丸まったまま。アイロンをかけたいシャツとブラウスに、畳んでいない室内干しの洗濯物。洗ったあと棚に戻していない食器類…。
もう今日だけは知らない、と遥は呟き、散らかった部屋に背を向け、鍵を閉めた。
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第10話:本命彼女がいるのに、他の女に見惚れた夜…。誘惑に負けて一線を越えかけた男への、不穏な着信とは
「圭介さん…私、圭介さんの大変そうな姿、見ていたくないんです。圭介さんのお手伝いがしたいんです。公私ともに」
圭介は、恵美理の目を見つめる。彼女の瞳は潤み、いたいけな仔犬のようでも、夜露に濡れた花びらのように妖艶でもあった。
ブーッ、ブーッ、ブーッ…
右手に持っているスマホが、もう一度振動する。
「恵美理ちゃん…」
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