実家暮らしの恋 Vol.5

「あなたはどうしたいの?」両親に依存していた28歳女に突き付けられた、“自立”への問いかけ

東京で1人暮らしを始める際、家賃の高さに目を疑う人も多いのではないだろうか?

特に23区の人気エリアでは、狭い1Kでも10万円を超えることはザラ。まだ収入の低い20代の若者たちの中には、“実家暮らし”を選択する者も少なくない。

家賃がかからない分可処分所得が多くなり、その分自分の好きなことにお金を使えることは、大きなメリットだ。

大手総合商社で働く一ノ瀬遥(28)もそのうちの一人。

仕事は完璧、また収入の大半をファッションや美容に投資できる彼女はいつも隙なく美しく、皆の憧れの的。最近は新しい彼氏もでき、全てが順風満帆…のはずだったが!?

お互いが実家暮らしであることにショックを受けた遥と圭介。圭介が彼女との時間を作ろうと前向きに考えているのも知らず、遥は彼と外でしか会えないことや実家暮らしの現実に違和感を覚え、遂に「一緒に住みたい」と泣きだしてしまうが…


圭介の決心


「…やっぱり、圭介と一緒に住みたいの…」

遥の涙がおさまるのを待つ間に、長い間揺らいでいた圭介の決心は固まっていった。

遥はいつも楽しそうで、自分にとっておきの笑顔を向けてくれる。しかし、圭介は彼女の変化に段々と気付き始めていた。

地下鉄の反対ホームで手を振ったあと遠くを見つめていたり、スーパーの袋を提げたカップルとすれ違う瞬間、気もそぞろに一生懸命話していたはずの話題を止めてしまうこともあった。

またソファを選んだあの日、「親父のプレゼント」と言ったあとの寂しそうにしていた表情も、見逃さなかった。

遥の、もっと一緒の時間を過ごしたいという思いは痛いほど感じており、その解決策をここ最近ずっと考えていたのだった。

圭介は、予約していた『日本料理 炭火焼 いふう』の扉を開ける。「上でもいいですか?」と言うと、店員は快く3階のテーブル席に通してくれた。

「…圭介、さっきはごめんなさい。私、取り乱しちゃって…。」

遥は申し訳なさそうに下を向いたあと、もじもじと周囲を気にする素振りをする。圭介の馴染みの店で、自分が浮かない顔をしているのは悪い、という心遣いが見て取れた。

―早く、言おう。彼女より先に。

運ばれてきたビールで唇を潤し、圭介は意を決する。

「遥、ちょっと、こっちに」

遥の耳元に自分の口を近づける。遥も少し身を乗り出し、ふたりは囁き合う距離になった。

「俺たち、一緒に住もう。」

そう遥の耳元で囁き、少し顔を離して微笑む。遥の大きな瞳には、圭介だけが映っていた。

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