実家暮らしの恋 Vol.8

「彼女の、どこが好きなんですか…?」24歳の後輩女が男に仕掛ける、同棲カップルを別れさせる為の策略

東京で1人暮らしを始める際、家賃の高さに目を疑う人も多いのではないだろうか?

特に23区の人気エリアでは、狭い1Kでも10万円を超えることはザラ。まだ収入の低い20代の若者たちの中には、“実家暮らし”を選択する者も少なくない。

家賃がかからない分可処分所得が多くなり、その分自分の好きなことにお金を使えることは、大きなメリットだ。

大手総合商社で働く一ノ瀬遥(28)もそのうちの一人。

仕事は完璧、また収入の大半をファッションや美容に投資できる彼女はいつも隙なく美しく、皆の憧れの的。最近は新しい彼氏もでき、全てが順風満帆…のはずだったが!?

両親からの許しを得て、一緒に暮らすことになった遥と圭介。

最初はウキウキの同棲生活だったが、暮らしが思い通りにならない苛立ちから、遥と圭介の間には目を背けられない溝が出来はじめて…!?


親友・みなみの思い


「彼の好きなところに、自信が持てなくなった?」

みなみは遥からのSOSを受け、『南青山 エッセンス』に来ていた。目の前にいる親友が分かりやすく焦燥しているのを見て、みなみは困惑する。

―遥がこんな弱音吐くなんて、よっぽどなのかも…。

同棲を始めたという報告を受けた時、みなみは素直に驚いた。恋愛に慎重な遥が付き合って1年も経たずに同棲に踏み切るなんて、よっぽどその彼が好きなのだろうと思っていた。

しかし何でも頑張りすぎる性格のせいか、同棲生活がうまくいかない不安が転じて彼への気持ちに疑いを持っている様子を見ると、相当思い詰めているに違いなかった。

不安そうな遥は、見た目も美しい中華の前菜を少しずつ口に運びながら言う。

「みなみは1人暮らしも長いし、前の彼とは週末同棲みたいにしてたじゃない?どうやってやってたの…?私、なんか自信なくなっちゃった…。一緒にいればいるほど、お互いの気持ちがすれ違うのが分かって、話し合える環境にいるのに話し合わないと、更に溝が深まっていく気がするの。」

みなみは、遥のその大人びた台詞(歳は充分に大人なのだが、遥にしては)に感動すら覚えていた。

「そうだなあ…まあ結局別れてしまったから、何も良いアドバイスは出来ないんだけど。でも、人にはそれぞれ今大事にしたいもの、そうだなあ、距離感とか、仕事とか、そういうものがあって、それを侵食しないようにするのがいいんじゃない?彼は今、話し合いたいとか、そういうのよりも、そっとしておいて欲しいのかもよ。」

そういうものかな、と遥は言うが腑に落ちてなさそうだ。

「遥、家と会社の往復だけじゃなくって、なんか気分転換した方がいいよ?遥、すぐ思い詰めちゃうから…」

そうだねえ、と遥は力なく笑っただけだった。

皮肉な話だが、仲のいい人、親しくしたい人と一緒に居ればいるだけいいかというと、そういう訳でもない。2人には2人しかわからない距離感を、お互いで掴んでいくしかない。

みなみは切羽詰まった様子の遥を見ながら、そう思った。

そして遥の気分転換の方法を考えてみよう、と思うのだった。

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