相原勇輝の女性関係
「ねぇ、相原くんって彼女いるのかな」
帰り道、私は浮かれる心を抑えきれず玲奈に尋ねた。
彼女と私は二人とも恵比寿で一人暮らしをしている。クール系美女の玲奈とミーハーな私は、男の趣味も何もかも正反対。しかし家が近所という共通点があったおかげで、同期で1番の仲良しになれた。
「どうだろう?いないと思うけど…」
「そうなんだ!」
しかし食い気味にはしゃいだ声を出す私に、玲奈が慌てて付け加える。
「違う。待って。特定の彼女はいない、って意味よ」
冷ややかな彼女の言葉に、私は「ああ…」と思わず低い声を出す。
いや、まあ、冷静に考えてそうだろう。
私が惹かれるような男に、女がいないわけがない。そんなことは最初からわかっていた。
しかし“特定の彼女はいないが遊ぶ女はいる”というのは…果して“彼女がいる”より好条件なのだろうか、悪条件なのだろうか。
得意のポジティブシンキングで“彼女がいるよりマシ”だと思い込もうとしたが、さすがに根拠がなさすぎて失敗に終わった。
けれど−。
『摩季ちゃん、待って。忘れてた』
帰り際に、相原勇輝はわざわざ私を追いかけてきたのだ。そしてLINEを交換しようと言われた。
『OK。また連絡する』
さらりとそう言い、笑顔を残して彼は去った。
あれはただの社交辞令だったのだろうか。でもそれなら、わざわざ追いかけてきたりするだろうか?それとも、たくさんいる女の一人として会おうって意味だったのか…?
「ね、相原くんから、連絡するって言われたんだけど、会わない方がいいと思う?」
そんなこと、玲奈に聞いても仕方がない。わかっていながら、意味のない質問が口をついて出た。どうやら私は動揺しているらしい。
「いや…どうかな。まぁ摩季が私の同期だってことは相原も知ってるんだし、さすがに変なことはしないと思うよ。彼はモテるけど、酷い男ってわけじゃないから」
言葉を選んで答えてくれる玲奈。クールで冷たい印象を持たれがちだが、実は優しい女性なのだ。
「そうだよね。まあまだ誘われたわけでもないし。連絡なんてこないかもっていうか、多分こない。心配するだけ無駄だわ!」
柄にもなくウジウジとしてしまった自分が情けなくて、自虐を交えて笑い飛ばす。
しかし実は私には、直感ともいうべき確信があった。彼はきっと連絡をくれる。私たちは必ず、特別な関係になれると。
気のせいだって笑われてもいい。けれどふたりの目と目が合ったあの瞬間、私は確かに心が触れ合うような手応えを感じたのだ。
村上摩季・27歳。
次に恋をする時は、もうモテ男は選ばない。そう自分に言い聞かせていた。先に結婚した女子大時代の友人たちがこぞって勧めてくるような、結婚向きの男を探すつもりだった。
けれど、やっぱり無理。
結局私は、爽やかで笑顔が可愛くて、女心がわかってて、ずるくて、でも優しい男に恋することをやめられないのだ。
それならば、そういう男に選ばれる女になるしかない。
…そしてそのチャンスは、思うよりも早く訪れた。
▶NEXT:4月20日 土曜更新予定
思うより早く、モテ男・相原勇輝から連絡が。しかしいきなり壁にぶち当たる。
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この記事へのコメント
みんな本当はモテる男が好きなんです。
ただ妥協してるだけで。
と思ったけど、私もこんなだった‼️爆