モテる男 Vol.1

モテる男:「この人、ズルい…」一瞬で女心を掴んだ男の、さりげないテクニックとは

事の発端は先週末のこと。

同じIT企業に勤める同期・橋本玲奈に誘われ、私はとあるバーベキューに参加した。

週末、豊洲『ワイルドマジック』に集まった男女はざっと20人。その会を仕切り、幹事を担当していたのが、玲奈と、彼女と同じ有名私大の同級生・相原勇輝だった。

手前味噌になるが、私たちが勤めるIT企業は美人揃いで名高い。

言ってしまえば、大手総合商社に勤める勇輝がハイスペ男を、玲奈が美女を集め、イケてる男女で楽しくやりましょうという会だった。

実際、参加メンバーは男女ともにハイレベルだったと思う。

とはいえ私の記憶は相原勇輝と交わしたやりとりでメモリいっぱいとなり、他は殆ど覚えていないのだが…。

モテる男は、ずるい。


「ね、相原くん。LINE交換しよう♡」
「あ、私も交換したい!」

乾杯とともに会がスタートし、ひとしきり社交辞令も済んだ頃。斜め後方から聞こえた声に、私は「しまった」と振り返った。

急いで彼の姿を探す。すると目ざとい女たちが、さっそく相原勇輝を取り囲んでいた。

モテ男センサーなら、出会った瞬間に働いていた。取り立てて美男子という訳ではないが、相原勇輝には人を惹きつける華があった。集まった女性陣がチラチラと彼を盗み見る視線にも、もちろん気がついていた。

「相原くん素敵」

隣にいた玲奈にも、すぐにそう宣言した。クールな彼女は「ああ、好きそう」と棒読みで返事をしただけだったが。

ところが会が始まると、私は無駄に長女気質を発揮し、肉焼きおばさんと化してしまっていた。そのせいで出遅れてしまい、気がつけば完全に蚊帳の外。

−私としたことが、痛恨のミス。

しかも額に脂を滲ませている私とは対照的に、火の元に近寄りもしない女たちは皆、涼しい表情のまま完璧な装いを保っている。そこに突入するほどの図々しさは、さすがの私にもなかった。

ひとまずここは諦めるしかない。そう思い、再び調理係に徹しようとしたその時。奇跡が起きた。

「ごめん、俺代わるよ。摩季ちゃん全然食べてないでしょ」

皆の輪の中にいたはずの相原勇輝が、私の肩をポンと叩いたのだ。

「え…あ、ありがとう」

目を丸くする私に向けられた、彼の柔らかな笑顔が頭から離れない。まるで、キラキラ輝く粉が舞っているように見えた。

−ああ、ずるいなぁ。

そう、モテる男ってやつは本当にずるい。

誰にも興味なさそうにしている癖に、ちゃんと名前を覚えていてくれたり。周りなんか気にしていない様子で、実はちゃんと気を配っていたりする。

そしてここぞのタイミングで不意打ちの優しさを見せ、女心をごっそり持っていくのだ。

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