東京コンプレックス Vol.1

東京コンプレックス:結婚できない女が、煮え切らぬ彼氏のプロポーズを引き出した意外な方法とは

地味で平凡な、あの子がなぜ!?


ー今度、結婚することになったの!ー
ー仲の良かったみんなを招待させてもらいたくて...!−

それは、同級生・山崎真美からのLINEだった。中高時代に仲良くしていた4人グループのうちの1人だ。

彼女からの“ご報告”に、私は心底驚いた。いや、怒りを感じたと言ってもいい。

なぜなら真美はグループの中でも存在感が薄く、性格も外見もどちらかといえば地味な方だったから。学生時代だって、私の方が数倍モテていた。

そんな私を差し置いて、なぜ真美が先に結婚するわけ...!?

黒い感情が湧き出る間にも、スマホ画面にはグループメンバーからの次々にお祝いの言葉やスタンプが飛び交う。

慌てて私も「おめでとう!」と返信するも、とても真美の結婚を祝える心境ではない。

...しかし次の瞬間、私の気持ちは180度変わった。

仲間のひとりが尋ねた「お相手はどんな方なの?」という質問に、真美がなんと「開業医」と答えたからである。

一向にプロポーズをする気配のない優介に苛立っていた私は、“新たな候補”の発掘に抵抗がなかった。

しかも挙式はハワイで行い、私たちが招待されたのは『ブルガリ イル・リストランテ』で行われる2次会のみという気軽さだったのだ。


ーこれは...行くに決まってるわ!

たしかに私は優介が好きだ。一重の眠そうな目元も、少し斜に構えたことを言う時もあるが、基本的に育ちのいいお坊ちゃんなところも愛おしい。

だが私は、優介が考えているよりもはるかに「結婚」というものに固執している。

2次会当日に向けて、私は肌のコンディションを丁寧に整え、美容院やネイルサロンの予約を取った。

男は結局、見た目の良い女に惹かれるものだ。それから決して高飛車にならず、笑顔で相手の話を聞き、適度に持ち上げてあげる。そうすれば、男たちはたちまち私に好意をもつに違いない。

実際、2次会の会場に入った途端、私はひっきりなしに声をかけられた。

私はたちまち機嫌が良くなった。真美が医者と結婚したことは全く面白くない。しかしこうして収穫が得られるのなら、偽りの祝いの言葉を口にした甲斐があるというものだ。

しかしー。

あの冴えなかった真美が、燦然と輝くウェディングドレスを着て登場した瞬間。私は再びどうしようもない嫉妬心に支配された。

幸せそうに、開業医の夫の横で微笑む真美。

...どうして。真美よりずっと華やかで、男にモテるはずの私が、なぜ「妻」に選ばれないのだろう。

妻になれないなら、結婚できないなら、いくら男にモテたって意味がない。なんだかすべてが徒労に終わったような気分になり、2次会後半は作り笑顔をキープするのがやっとだった。

この記事へのコメント

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No Name
突然スーッと気持ちが冷めちゃうこと、あるよね
2019/03/29 05:5399+返信11件
No Name
最後カッコイイ!
夜食食べに行きたいって突然言い出すのもだけど、LINEに返信がないからって電話してくるのにイラっとしてしまった…。
相手の状況考えられないのかな?
2019/03/29 05:2799+返信5件
No Name
結局、彼の事そんなに好きではなかったかと。そして、たぶん開業医みたいな専業主婦やっていける職業の相手が良くなったんでしょうね。気持ち変わらなくもないけど、彼氏可愛そう。
2019/03/29 05:4897返信3件
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