2019.03.29
東京コンプレックス Vol.1ついに爆発する、優介への怒り。
ーね、今からそっちに行っていいかな?最近会えてないし、唯子のメシ食いたい。
二次会もお開きに近づいた頃。高いヒールで疲弊している私の元に、優介からののんびりとしたLINEが入った。
−こんな時間にご飯食べたいだなんて、一体何考えてんのよ−
私の脳裏には、たった今見てきたばかりの真美の幸せそうな花嫁姿がチラついていた。
八つ当たりだって分かっている。けれど、今夜はどうしても優介に優しくできない。
既読スルーしていたら、5分もしないうちに電話がかかってきた。仕方なく応答する。しかし相変わらず呑気な口調についカッとなってしまった。
「ごめん、今夜は夜食とか作れる気分じゃないから。優介って、ホント自分のことしか考えてないよね」
それだけ言うと、返事も聞かずに通話を終了した。
...本当に、優介は自分のことしか考えていない。私の年齢とか、結婚したい気持ちだって、分かっているくせに無視しているのだ。
今夜はもう、何もかもから逃げ出したい。
1年も付き合っているのに結婚したいとも言わず、夜食だけ食べに来たいという男から。そんな男の愛にしがみついている自分、そして友人の結婚を素直に喜べない自分からもー。
所詮、優介は私のことを見くびっているのだろう。私のような女など、掃いて捨てるほどいるとすら思っているかもしれない。
なぜ自分は1年もの間、そのことに気がつかなかったのだろう。何もかもが急にバカバカしく思え、私はなおも電話をかけてくる優介をブロックすることにした。もちろん、別れる覚悟で。
全てをリセットし、一からやり直すつもりだった。
だがその翌日。事態は思いもよらぬ方向に動いたのだ。
男に結婚を決意させる、たった一つの方法
翌日、出勤を終えて帰宅した私の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
...なんとマンションの入り口に、気まずそうに佇む優介がいるのだ。
「え…優介なに、どうしたの?」
すると戸惑う私に、優介はいつになく真剣な表情で語り出した。
「唯子、ごめん。俺、今まで唯子に甘えすぎてた。たしかに自分の都合ばっかでさ、最低だよ」
その声は少しばかり震え、その目には、どうか私に受け入れてもらいたいという必死さが浮かんでいる。
「今さらそんなこと言われても…」
...どうしたらいいのだろう。私はもう、優介に哀れな期待をするのはやめたのだ。プロポーズをしてくれない男とは、もう一緒にいられない。
しかし心を閉ざしたままの私に、優介はついにそれを口にしたのだ。
「俺、ちゃんとするから。唯子にキッパリと言われて気付いたんだよ。俺、唯子がいないとダメだ。結婚しよう」
そう言って、目の前の男は私をギュッと抱きすくめた。
その瞬間...確かに甘やかな喜びが身体中を駆け巡った。しかし同時に、どこか冷静な自分もいた。
私はずっと結婚できないことにコンプレックスを抱いてきた。なぜこんなにも努力している自分が選ばれないのかと、悶々とした日々を過ごしてきたのだ。
そして自分はたったいま、優介からずっと待ち望んでいたプロポーズをされた。しかし昨日までの自分と今日の自分は、何も変わっていない。見た目も性格も、ましてや人間的な魅力もなにもかも同じはずだ。
つまり今夜のプロポーズは、男が危機感から焦って口にしただけ。私に連絡を絶たれた優介が、「この女を自分のものにしなくては」と思っただけのこと。
それに気がついたら、私はなんだか急にスーッと熱が冷めてしまったのだ。
プロポーズって、こんな駆け引きで手に入るものだったのか。妻になれるかなれないかって、男の危機感を煽れるかどうかってだけの話だったのか。私の女としての価値云々とは、まるで関係ないんじゃない。
しばしの沈黙の後、私は自分でもびっくりするほど冷静に、優介に対し「考えさせて」と答えていた。
▶NEXT:4月5日 金更新予定
地方出身というコンプレックスに苛まれる、起業系港区女子の闇
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
夜食食べに行きたいって突然言い出すのもだけど、LINEに返信がないからって電話してくるのにイラっとしてしまった…。
相手の状況考えられないのかな?
【東京コンプレックス】の記事一覧
2019.07.05
Vol.16
「このままじゃ、一生独身だよ?」セレブ妻となった親友の忠告に隠された真意とは
2019.07.04
Vol.15
満たされない男女が抱くコンプレックスの闇...「東京コンプレックス」全話総集編
2019.06.28
Vol.14
「子ども2人、専業主婦の私は勝ち組」ベストな選択と信じ、会社を辞めた女の現実
2019.06.21
Vol.13
高収入の男と結婚したい、28歳OL。凡庸な女が“普通”から抜け出すための戦略とは
2019.06.14
Vol.12
「私はおばさんにならない」鋼メンタルで加齢と戦う独身アラフォー美女の叫び
2019.06.07
Vol.11
「愛しているならどうして...」レスに悩む美貌の妻が辿り着いた、最後の切り札
2019.05.31
Vol.10
「働いていたら、完璧な母になれない」仕事と子育ての両立に悩む女たちの悲鳴
2019.05.24
Vol.9
同棲を始めたら豹変した男。いきなり本を投げつけられてもなお「私は幸せ」と言い切る女の闇
2019.05.17
Vol.8
「絶対に美人をモノにしたい」コンプレックスを抱える男が、美女を妻にしたテクニックとは
2019.05.10
Vol.7
「もう我慢できない」義母との同居生活に嫌気が差した嫁の、狡猾な復讐方法
おすすめ記事
2018.03.02
サイコパスな夫
サイコパスな夫:東大卒・外銀勤め・身長185cmのイケメン。完璧な男の正体は“サイコパス”だった?
2017.06.03
東京・ホテルストーリー
東京・ホテルストーリー:自己満足なんて言わないで。幸福な花嫁を襲う、結婚式のジレンマ
2022.10.01
男と女の答えあわせ【Q】
ごくごく“普通”の女がモテるワケは…。上場を控える男が交際相手に選んだ、意外な相手
2020.06.15
あなたに会える、その日まで
「本当は私、妊娠してるの」職場での告白に、同僚たちが見せた意外な反応
2023.02.01
未解決恋愛事件
金曜の夜、23時以降だけ連絡が取れなくなる女。実は、彼氏に内緒で“別の男”と過ごしていて…?
2018.09.07
想定外妊娠
想定外妊娠:一生独身だと思っていたのに。突然妊娠が判明した、32歳キャリア女子の運命
2020.06.06
お試し夫婦
「このまま彼と結ばれるのかも・・・」女がそう期待した直後に、起こった悲劇
2023.03.01
【ご報告】
【ご報告】:同期入社の男女が過ごした一度きりの熱い夜。いまだ友人同士ふたりが数年後に再び…
2016.08.01
神楽坂の男
神楽坂の男:好きになる女性のタイプも変わったワイン好き男子、神楽坂での心境の変化
2019.07.06
1/3のイノセンス ~友達の恋人~
1/3のイノセンス 〜友達の恋人〜:“親友”のレッテルを貼られてしまった女の悲劇
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2024.03.17
男と女の答えあわせ【A】
彼の家に初めてお泊まりした28歳女。洗面台の裏戸棚で見つけてしまった、ヤバいものとは
2024.03.12
Editor's Choice~fashion~
最強の一粒万倍日で運気UP!ルイ・ヴィトンやディオール、グッチなど、おすすめの新作財布6選
2024.03.11
「髪型が決まらないと出社したくない!」そんなお洒落男子に欠かせない3種の神器が登場
2024.03.14
Editor's Choice~beauty & wellness~
春トレンドのツヤ肌が叶う、新作ベースメイクアイテム3選!塗るだけで“生まれつき美肌風”な仕上がりに
2024.03.15
大人の週末ToDoリスト
虎ノ門ヒルズのワインフェスや都内各所で開催のファッションショー…今週末行きたいイベント3選
この記事へのコメント