罠 Vol.8

「ずっとあなたが、憧れだった」。潤んだ瞳でそう言っていたのに、一瞬で夢とキャリアを奪った卑劣な女

—今すぐ、婚約を破棄しろ。

ある日、柊木美雪(ひいらぎ・みゆき)のSNSに届いた奇妙な一通のメッセージ

恋人の黒川高貴(くろかわ・こうき)からプロポーズをされて幸せの絶頂にいたはずの美雪は、その日を境に、自分を陥れようとする不気味な出来事に次々と遭遇する。

“誰かが、私たちの結婚を邪魔している。でも、一体誰が…?”

美雪を待ち受ける数々の“罠”をくぐり抜け、無事に結婚にたどり着くことが出来るのか-?


美雪は、ブライダルフェアで知り合い仲良くなった鈴木ゆりこを救うため、彼女がいるバーへと向かうが、そこで山本という男からキスされそうになった。

キスは未遂に終わったが、高貴のもとに、何者かからキスしているかのような写真が送られてくる。

美雪は、結菜や藍と共に調査を開始し、親友・凛香への疑惑を深めるが、思い違いだったようだ。しかし今度は高貴の母親に写真が送られてしまい、結婚延期を言い渡される。

困り果てた2人は、探偵に写真の指紋鑑定を依頼するが…?


指紋鑑定の結果


芹澤に指紋鑑定を依頼した1週間後。

高貴が「結果が出たよ」と言いながら、調査報告書を持って家にやってきた。

2人でソファに腰を下ろし、分厚い報告書のページを競うようにめくる。すると、ある文章が目に飛び込んできた。

『写真から、鈴木ゆりこ氏の指紋は検出されませんでした』

やっぱりゆりこは、シロだった。じゃあ誰が犯人なのか…?

フラフラと眩暈がして、文字が醜く歪みだす。額を手で押さえながらなんとか読み進めると、写真に付着していた指紋は私、高貴、結菜、藍の4名のみと書かれていた。

「…この中に犯人がいたりして」

視界がなんだかぼんやりとしているが、調子が悪いのを高貴に悟られないよう、冗談っぽく笑ってそう言った。しかし高貴は、真顔で返してきた。

「まさか。『犯人が手袋等をしていたら指紋は検出されません』って注意書きに書いてあるから、きっとその方法でやったのかな…。なんだか迷宮入りしてきたな…」

不意に激しい頭痛に襲われ、私は思わず頭を抱え込む。

「美雪、大丈夫?顔色が悪いよ。なんだかやつれているし、どこか具合でも悪い?」

「最近ちょっと、頭痛が酷くて。眩暈や立ち眩みもするし、動悸がすごいの。夜もなかなか眠れないし、そのせいで日中ずーっとぼんやりしていて、食欲もなくて…」

すると高貴が、鞄から聴診器を取り出して聴診を始めた。戸惑う私に、「息を吸って」「吐いて」と冷静な口調で指示している。

「問題はなさそうだな…。精神的なものかもしれないから、よかったら一度、僕の知り合いがやっているメンタルクリニックに行ってみないか?この近くにあるんだ」

「行ったことないから、ちょっと不安かも…」

「大丈夫。僕も一緒についていくから、安心して」

こうして私は、メンタルクリニックを受診した。そしてなんと、軽度のうつ病と診断されてしまったのだった。

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