罠 Vol.4

罠に嵌められた、プレ花嫁。他の男との「キス未遂写真」を婚約者に送りつけた、裏切り者は誰?

—今すぐ、婚約を破棄しろ。

ある日、柊木美雪(ひいらぎ・みゆき)のSNSに届いた奇妙な一通のメッセージ

恋人の黒川高貴(くろかわ・こうき)からプロポーズをされて幸せの絶頂にいたはずの美雪は、その日を境に、自分を陥れようとする不気味な出来事に次々と遭遇する。

“誰かが、私たちの結婚を邪魔している。でも、一体誰が…?”

美雪を待ち受ける数々の“罠”をくぐり抜け、無事に結婚にたどり着くことが出来るのか-?


美雪は、ブライダルフェアで鈴木ゆりこと出会い、二人は急速に距離を縮める。

ある夜、ゆりこから「助けて」というLINEを受け取った美雪は、急いで彼女がいるバーへと向かう。そこで怪しげな男からキスされそうになり、慌てて帰ったが…。


1枚の写真


銀座のバーに行った日から3日後。

私はザ・ペニンシュラ東京の『ザ・ロビー』で高貴と向かい合って座っていた。

しかし、高貴の様子がおかしい。先ほどからずっと無言なのだ。

約3週間ぶりの再会だというのに、弱々しい視線をテーブルの上に落とし、ぼんやりとした様子でナイフとフォークを動かしている。

「久しぶりだね。元気だった?」

私がそう尋ねても、返事はなかった。

「どうしたの?お仕事、大変なの…?」

そもそも「今夜会いたい」と、突然3時間前に言ってきたのは、高貴のほうなのに。無言を貫く彼を見ていたら、なんだか嫌な予感がする。

その瞬間、「あのさ」と言いながら、高貴が鞄の中から1通の封筒を取り出した。

「この封筒が、医局の僕宛に送られてきたんだ。開けてみて」

それは何の変哲もない1通の白い封筒で、中を見ると1枚の写真が入っている。私は怪訝に思いながら、写真を取り出した。

そのとき、体が凍り付いたー。

なぜなら、男女が薄暗いバーで顔と顔を寄せ合い、まるでキスをしているかのような姿が、残酷なほど鮮やかに写し出されていたからだ。

それはどこからどう見ても、3日前、山本が私に顔を近づけながら告白してきた瞬間を、何者かに撮られた写真だった。写真を持つ手が小刻みに震えだす。

-誰?誰が撮ったの?まさか…?

ふと、1人の女の顔が頭をよぎる。

「ねえ、美雪。ここに写っているのって、顔は見えないけど、髪型と背格好からして美雪だよね?相手の男、誰?2人で何してるの?」

高貴が硬い表情のまま、低い声で矢継ぎ早に質問をしてくる。その目はドキリとするほど冷たかった。

「違うの、ごめん、あの…」

突然の事態にたじろぎ、うまく言葉を紡ぐことができない。

私は息を吸ってなんとか心を落ち着かせると、婚約直後から起きたすべての出来事を高貴に話したのだった。

【罠】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo