2018.12.02
無業の女王 Vol.134歳、国立大卒の美しき才女、高木帆希(たかぎ・ほまれ)。
父親は作家の傍らコメンテーターとしても人気の有名人で、「家事手伝い」という名の「無業」で10年もの間、ぬくぬくと過ごしてきた帆希。
そんな働かずとも裕福に暮らしてきた彼女に、突如、不幸な出来事が降りかかる。
再び「社会」と向き合わざるを得なくなった無業の女は、どのようにサバイブするのか?
「おはようございます、高木様。いつものでよろしいでしょうか?」
「ええ。先にスパークリングを頂くわ」
「かしこまりました」と上品に微笑む顔なじみのウエイター。
いつもと変わらない朝が、今日も始まろうとしている。
目白にある私の家からほど近い、ホテル椿山荘にある『イル・テアトロ』。
ここのプレミアムブレックファーストを頂くのが、私の日課だ。
甘みのあるハニーハムと、ザバイオーネソースの酸味が絶妙なエッグズベネディクトに、薫り高い黒トリュフがスライスされ、食欲をそそる。キリっとしたシャンパンを流し込むとシナプスがパチパチとつながっていくようだ。
私は週三回、ここ『イル・テアトロ』で朝食をとる生活をしている。
ーもう10年か…。
私は、高木帆希。34歳、独身。横浜にある国立大学の修士課程を卒業した私は、家事手伝いとして父の仕事をささやかにサポートしている。
父は、恋愛小説を得意とした作家で、映像化はもちろんのこと、最近では港区にあるテレビ局のお昼のワイドショーのコメンテーターとして人気を博している。
ロマンスグレーの髪に、ちょっとレトロな黒ぶち眼鏡をかけた父を、私は生真面目で遊びのない人だなと思っているのだが、世間では、「知的でセクシー」という評判らしい。不思議なものだ。
あんなにも男と女の濃密な情事を鮮烈に描く父だが、この10年ずっとそばにいても、女の影を感じたことは一度もない。
ーお母さんのこと、今でも愛してるのかしら…。
母は私が大学院に通っていた頃、乳がんを患い他界した。社会人だった兄は、すでに独立していたこともあり、私が母の代わりとして父の面倒を見ているというわけだ。
「高木様、おさげしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、ご馳走様。今日も美味しかったわ」
そう言って私は、心からの感謝を伝えると、小さな泡が弾けるグラスをクッと飲み干した。遅めの朝食を優雅にホテルのレストランで頂ける生活に、私は満足している。
ゆったりと流れる幸福な時間は、これから先“私が望む限り”続くものだと、この時の私は信じて疑わなかったー。
この記事で紹介したお店
イル・テアトロ/ホテル椿山荘東京
説教して娘に嫌われるのが嫌だったのかもしれないけど、いきなり放り出すのは無責任。
散々甘い顔をしてきた父親にも問題があると思う。
【無業の女王】の記事一覧
2019.02.03
Vol.11
34歳になっても自立できなかった女が、誰かに寄生する日々に終止符を打とうと思えた理由とは
2019.02.02
Vol.10
「働かない」と決めた、34歳・高学歴・無職美女の行く末は?明日で最終話!「無業の女王」総集編
2019.01.27
Vol.9
黒い傘がもたらした不運。見知らぬ男から突然声をかけられ、人生初の挫折を味わった女
2019.01.20
Vol.8
初対面でいきなり頭を撫でてきた男の、底意地の悪い魂胆とは。34歳独身女がハマった罠
2019.01.13
Vol.7
あの日、あの時、あそこに行かなければ…。過去の傷を抱えた女2人の、奇妙な共同生活とは
2019.01.06
Vol.6
「僕なら裏切らない」耳心地の良い言葉を並べ、現代女性の“駆け込み寺”を作った男の正体
2018.12.30
Vol.5
初めての婚活で出会った、35歳こじらせ男との恐怖の一夜。急に態度を豹変させた、彼の正体とは
2018.12.23
Vol.4
意地でも離婚はしない。夫以外の男に縋りながら、虚しさを溜めこむ女の歪んだ愛情
2018.12.16
Vol.3
“二子玉川で1番みっともない女”に成り下がった日。それでも曲げられない、34歳・無職の主張
2018.12.09
Vol.2
働かずに生きてやる。彼に裏切られて人生最悪の日に下した、34歳・独身女の無謀な決断
おすすめ記事
2022.02.20
選ばれし女―Who was chosen?―
選ばれし女―Who was chosen?―:結婚願望のないハイスペ男が“結婚”を決意。絶対手に入れたかった女とは
- PR
2024.04.25
GWは愛車で小旅行!彼女をドライブに誘った男が、密かにアップデートした“あるモノ”とは?
2018.05.08
隣のスーパーウーマン
「私がやらなきゃいけないなら、辞めます」35歳・お局の反乱。次のターゲットにされたのは誰?
2019.07.21
200億の女
「彼といると、自分がコントロールできない」。2人の女を翻弄する、男の巧みな話術とは
2017.11.04
恋愛中毒 番外編:「私を、馬鹿にしてるの?」人妻に嫉妬した独身女の、知られざる胸の内
2021.08.09
カレと結婚して大丈夫?
カレと結婚して大丈夫?:「彼のこと、男として見れない…」プロポーズされた29歳女が不安を抱くワケ
2020.04.23
9ルールズ~3ヵ月で結婚する方法~
「デートには誘われるのに…」結婚に行きつかない女が、見落としがちな意外な盲点
2020.06.24
夏の恋
夏の恋:「東京オリンピックに一緒に行こう」と誓い合った男と女。7年越しの約束の行く末は?
2024.04.02
今日、私たちはあの街で
慶應の音楽サークルで、三角関係に陥った男。親友の彼女を好きになってしまった結果…
2017.02.18
五反田ラバー
「五反田の何がダメなの?」現役五反田女子が古巣港区でブチ切れた?五反田ラバー最終回
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.04.23
今日、私たちはあの街で
3回目のデートで、終電を逃した28歳女。翌朝、男が激しく後悔したワケ
2024.04.23
Editor's Choice~fashion~
最大10連休のGWのお出かけに!カラフルなミニボストンバッグが、万能な理由とは?
2024.04.25
Editor's Choice~beauty & wellness~
すれ違ったときに香るぐらいが好印象!大人のニオイ対策には、上質なランドリーアイテムを取り入れて
2024.04.26
大人の週末ToDoリスト
GWは東京でヨーロッパ旅行気分! 『イタリア展 2024』や『フランス展 2024』などイベント3選
2024.04.28
Editor's Choice~gourmet~
最高に気持ちいい空間で、ラグジュアリーな外飲み体験!今から楽しめるビアガーデン6選
この記事へのコメント