ダディ Vol.10

「浮気なんて、しなきゃよかった…」若い愛人に溺れたゲス男が、妻を失いたくないと思い直す瞬間とは

港区界隈に生息している、40代・既婚の男たち。その名も「ダディ」。

仕事での成功は当たり前。

ハッピーな家庭も築き、アッパーエリアの公園に出没。

夜はイケてる腕時計をチラつかせ、「オッサン」を自称しつつ、部下にシャンパンを奢る余裕もある。

自他共に認める勝ち組オトコ、それが「ダディ」だ。

これは、今まであまり表立って語られたことのなかった、彼らの物語である。

好調な”ダディライフ”を送っていたリョウ(42)。だが、会社の右腕だと思っていた加納の裏切りが発覚し、その後も汚い手を使いリョウの会社を潰そうと企む。

プライベートでも妻の朋美に浮気を疑われてしまうなどトラブルが続くが何とか誤解は解け、会社の危機も乗り越えた。

因縁の男・加納の子供も通う運動会への参加することになったが、当日、加納の姿はなかった。


運動会に来ない父と、その理由


「あら?あれ加納さん達じゃないかしら?」

四郎の妻が、娘・マリの髪型を直す手を止めて、広い園庭のちょうど向かい側を見遣る。

その視線の先には、シートを広げる加納の家族の姿があった。加納の妻に、 孫の姿を眺めながら微笑む老夫婦。だが、やはり加納本人の姿は見えない。

「私、去年のバーベキュー以来お会いしてないのよねっ」

事情を知っている朋美はリョウを覗き込むが、何も知らない四郎の妻は大声で手を振る。

「加納さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!」

快晴の運動会に相応しい、実に大きく爽やかな声。リョウが、嘘だろ、と思ったのも束の間、加納の妻はこちらに気がつき、慌てて向かってくる。

「あら、でもどうして加納さんのご主人見えないのかしら。うちの夫みたいに仕事?」

加納の会社が危機に瀕しているらしいことは、昨晩のうちに朋美には話しておいた。今や朋美は、加納が辞めた経緯、愛人のこと、奴の会社の倒産の危機など全ての内情を知っているにもかかわらず、終始落ち着いた様子である。

一方で四郎の妻は、広い園庭を小走りして息を切らす加納の妻に、無邪気に問いかけてしまう。

「ご主人、お仕事かしら?うちもなの。もう、運動会の日くらい休んでほしいわよねぇ」

「それが…」

加納の妻は言葉を濁しているが、今にも泣き出しそうな表情だ。朋美はサッと何かを感づいたようで、美優に声をかけた。

「美優、マリちゃんの髪の毛、やってあげて。ちょっとママたちお話があるから」

そうして妻たちは、運動会が始まる15分前だというのに園庭の隅に消えていくのだった。

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