港区界隈に生息している、40代・既婚の男たち。その名も「ダディ」。
仕事での成功は当たり前。
ハッピーな家庭も築き、アッパーエリアの公園に出没。
夜はイケてる腕時計をチラつかせ、「オッサン」を自称しつつ、部下にシャンパンを奢る余裕もある。
自他共に認める勝ち組オトコ、それが「ダディ」だ。
これは、今まであまり表立って語られたことのなかった、彼らの物語である。
男として最も輝ける時代、それが40代だ
21時の西麻布交差点。
飯塚リョウは、おもむろにスマホを取り出した。
待受画面は、愛娘の美優。小学校4年生になり、本格的に塾通いを始めた美優は、最近またグッと生意気な口を利くようになった。
1年生の頃まではパパ、パパと抱っこをせがんでいたというのに、今ではすっかり大人びて妻の友達然としている。待受の写真は、そんな美優に嫌がられながらもハワイで撮ったツーショット写真だ。
「大っきくなったよなぁ…」
飛行機の中で大人しく出来ない年齢はとうに過ぎ去り、3人での海外旅行も随分と楽になった。妻の朋美と、猛スピードでチョロチョロする美優を追い回していた日々を思い出すと、柄にもなく込み上げてくるものがある。
美優の成長に伴い、当たり前だが自分も歳を重ねた。今年で42歳になる。
4年前、新卒から勤めていた外資系消費財メーカーを退職して独立。培ってきた人脈を活かし、美容機器や商材をクリニックやエステなどに卸す会社を立ち上げたのだ。
がむしゃらに働いて来たおかげで、暮らし向きも随分と豊かになった。40前でイチかバチかの勝負に出て、今のところ業績は右肩上がり。
ライフステージが変化したのと同時に、経営者仲間の薦めで江東区から港区に引っ越した。
妻の朋美は「港区なんてママ友とのお付き合いが大変そう」と尻込みしていたが、小学生ともなるとそうした付き合いはグッと減るらしい。子供が学校に行っている間に近所の洒落たカフェでバイトをしたりと、意外と楽しそうで安心している。
ふと、思う。
青臭く、若さと性欲を持て余し気味だった20代・30代よりも、経済力も大人の落ち着きも基盤も手に入れた40代が、男としては1番イケてるのではないか?と。
リョウがそう思うのにも、然るべき理由があった。
この記事へのコメント
ご愁傷様!笑