2018.08.05
ダディ Vol.1港区の"パパ友"との交友録
「悪い、待たせたな」
待ち合わせ場所である『ケージュレップ』にやって来たのは、四郎だ。
リョウは彼のことを、親しみを込めて「四郎ちゃん」と呼んでいる。
外資系銀行勤めで、そこらの零細企業の経営者よりよっぽど羽振りが良い。同じ42歳。
晩婚だったから、娘のマリはまだ4歳。可愛い盛りの女の子だ。夫婦で、ボンポワンとバレンシアガキッズなどの贅沢な子供服を買いまくり、さらにはバイリンガル教育をしてくれる幼稚園に通わせている。
上智大学時代からの腐れ縁で、いまだに付き合いがあるのは四郎くらいだ。
40代ともなると、他の友人は海外に転勤して行ったり、何となく収入格差が生じて疎遠になってしまった。
リョウに起業を勧めてくれたのも四郎だし、豪快な稼ぎっぷりと常にブレないタフなメンタルは、素直に尊敬に値する。4年前からは"パパ友"としても付き合えるようになり、貴重な存在だ。
ウイスキーを注文する四郎の腕には、フランクミューラーの腕時計が嫌味なく存在感を発揮している。
「な、リョウみてみて、今日のマリちゃん。可愛いだろ?」
妻が毎日送ってくれるという写真を、何枚も見せてくる。四郎もリョウと同じく愛娘を溺愛しており、そんな共通点もあってこうして交友が続いているのだろう。
だがー。
「この子も見てよ、カナちゃん。この間デートしてさ…」
まるで悪気なく、愛娘の写真と同じテンションでそんな写真を見せつけてくるところに、リョウは多少辟易してしまう。
「四郎ちゃん…少しは慎重になれよ。そんなこと、奥さんにバレたらどうすんだよ」
少し皺の刻まれた目尻を下げて悪びれもせず笑いながら、四郎は続ける。
「だってさー…40代、かなりモテるじゃん。なんかこのモテ期に遊ばないの、勿体無い気もしてさ」
彼の言っていることは、あながち間違ってはいない。
リョウだって30代は、そもそも結婚して子供が産まれたばかりで、いわゆるそうした市場からは完璧に遠ざかっていた。
妻の朋美とぶつかりながらも育児に没頭し、仕事をこなしていたら遊ぶ気力なんて残らない。
だが、40代になり。
娘が8、9歳になった頃からだろうか。
妻の方にも随分と余裕が生まれたのと同時に、リョウにも自由に使える時間が飛躍的に増え、夜の誘いにも参加できるようになったのだ。
そこでビックリしたのが、自分たちがかなり"モテる"という事実。
リョウも四郎も金には困っていないから、たまに夜出歩く時にシャンパンのボトルを抜くぐらい、訳はない。
そんな風に飲んでいると、1時間もしないうちに勝手に隣に女の子が座っていることがよくある。(四郎が声をかけているのだが)
彼女らに言わせると、リョウたちは「ちょっとリッチ」で「ガツガツしてない」うえに「話もおもしろい❤︎」らしい。こんなところを妻に見られたらヤバイだろうな、と思いつつ、女性にチヤホヤされて悪い気はしない。
まぁ、最近の若い子はお金がないらしいし、タダでお酒が飲めればラッキーくらいに思っているだけだろう。大抵はその場で飲むくらいだ。
だが、今日出会った子はいつもの軽いノリではなく、かなり真剣にリョウの連絡先を聞いてきたのだった。
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