ふぞろいな駐妻たち Vol.12

憧れの“駐妻ワールド”は、楽園ではなかった…駐在妻を夢見て商社マンに嫁いだ女が、全てを失ったとき

駐妻【ちゅうづま】―海外駐在員の妻。

数多の平凡な妻の中で、一際輝くステータス。

駐妻ワールド。そこは華麗なる世界か、堅牢なる牢獄か。

夫・彬の赴任に伴い、タイ・バンコクに来た里香子。そこではかつての留学仲間ケイと、雪乃に再会する

里香子は、日本にキャリアを置いてきてしまったことへの葛藤から、彬と口論となり、はじめて夫婦仲に危機が訪れた。

一方、夫・仁志の女遊びに悩む雪乃は、夫の醜態がSNSで晒されている事実を知り、ケイは、タイ人彼氏の存在を隠してしまうことで自己嫌悪に苦しんでいた。

里香子と彬はピンチを乗り越えるが、その頃、雪乃には一本の電話が。それは仁志の帰国命令であった。果たしてそれぞれの決断は―?


「おお!里香子、顔濃いからそれ着てフルメイクするともはやタイ美人にしか見えない!」

雪乃とケイが身をよじって笑う。

雪乃のたっての願いで、3人はタイの民族衣装を着て、プロに「変身写真」を撮影してもらいにスタジオに来た。屋外のロケつきで4時間の大イベントだ。

3人は撮影中、ずっとはしゃいでいた。まるでロンドンで学生だった頃のように。

明日は、雪乃の本帰国の日だ。



「楽しかったなー。帰国する前に1度やっておきたかったんだよね。辞令が出てから3週間、バタバタで諦めてたけど…ありがとう里香子、ケイ」

すでに荷物が運び出されてがらんとした自宅で、雪乃はシャンパンの栓を抜きながら、二人に感謝を伝えた。

「変身写真って今まで取材するばっかりで、初体験だったけど、何だかんだ楽しいね。いろんな国で民族衣装着たくなったわ」

ケイがオリーブをつまみながら、さりげない調子で続ける。

「今日、仁志さんは?」

「会社が荷物搬出したあとは数日ホテルとってくれるから、そっちにいるはず。もう同僚にも『女問題でヤラカシて、バンコク支店初の強制帰国』だってバレて、最後は針のむしろみたい。

私も、友達にろくに挨拶できてない。引っ越しの手続きでバタバタしてたのと…合わせる顔がなくて」

そして雪乃は二人の顔を見ると、はっきりと告げた。

「私、仁志と離婚する」

【ふぞろいな駐妻たち】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo