恋と友情のあいだで 〜里奈 Ver.〜 Vol.6

夫のスマホを盗み見る妻の心理。裕福な男に“飼われる”専業主婦の、ささやかで悪質な抵抗

―あの頃の二人を、君はまだ覚えてる...?

誰もが羨む生活、裕福な恋人。不満なんて何もない。

でもー。

幸せに生きてるはずなのに、私の心の奥には、青春時代を共に過ごした同級生・廉が常に眠っていた。

人ごみに流され、都会に染まりながらも、力強く、そして少し不器用に人生を歩む美貌の女・里奈。

運命の悪戯が、二人の人生を交差させる。これは、女サイドを描いたストーリー。

派手な女子大生生活の後、総合商社での理不尽な社会人生活に疲弊した里奈は、7つ年上の直哉との結婚し裕福な人妻となった。

しかし、夫との愛情格差に打ちのめされ...?


「また急に出張が入っちゃったよ。金曜の夜からバンコクだけど、火曜には戻るから」

30畳の広々としたリビングに、夫のやや明るすぎる声が響く。

直哉は目を合わせようともしないが、私はシンプルに「はい」と笑顔で答えた。

仕事もあるのだろうが、きっとまた女連れだろう。でなければ、わざわざ金曜夜に出発する必要もない。

今さら、腹が立つこともなかった。

怒りや嫉妬、悲しみといった感情はエネルギーを消費するため、私はそれをコントロールする術をすでに身につけているのだ。

わずかに感じるのは、小さな落胆だけ。そうして私の心は、ただただ冷えていく。

―そいつのこと、結婚するほど好きなわけ?―

何年も前に廉に投げつけられた言葉が、今になって再び耳に蘇る。

夫の常習的な浮気に冷静でいられるのは、やはり彼の指摘が正しかったからだろうか。

そして今、私は廉に逆に問いただしてみたくなる。

―結婚を決めたのは、駐在のためでしょ?それともー。

私に何の報告もなしに、急に結婚してシンガポールへ駐在に行ってしまった

彼が何と答えるのかを想像するのは、夫がバンコクでどんな風に過ごすのかを考えるよりも、ずっと胸が痛むような気がするのが不思議だった。

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