教えたくない秘密のグルメ Vol.8

これは一生忘れられない体験になる! 広島にうまいビールがあると聞いたので徹底取材してきた!

広島に究極のビールを飲ませてくれる店がある。営業時間は17時から19時のたった2時間。

メニューはビールだけで、“ひとり2杯まで”というルール付き。そんな条件にもかかわらず、平日でも開店前には客が並び、その列は閉店間際まで途切れない。

ここで扱うビールは「アサヒ生ビール」一種類。私たちが普段飲んでいる銘柄となんら変わりがない。

変わるのは、そのビールを注ぐ人の技術である。その“注ぎ”の技術によって、その味を大きく変化させるのだ。

そこまで人を魅了するビールとは、一体どんなビールなのか。


同じビールでも“注ぎ方”で味が大きく変化する
『ビールスタンド重富』

辿り着いたのは、広島イチの繁華街・流川にある老舗の酒屋『重富酒店』。

その軒先にある角打ちのような小さなスペースが、噂の店『ビールスタンド重富』だ。

店先の看板に名を掲げるのはビールの作り手ではなく“注ぎ手”。

一度飲むと誰もが感動する重富 寛さんのビールを求め県外からも毎日のように客が訪れている。

白ジャケットに蝶ネクタイがトレードマークの重富さん。初代が最初にビールを学んだのが西宮のアサヒビール工場だったことに敬意を示し「アサヒ生ビール」を使用

メニューに載っているのは注ぎ方の種類。広島にある究極のビールとは、1種類のビールを注ぎ方で違う味に変える注ぎの達人・重富寛さんが作るビールなのだ。

数年探した末に見つけたという、アンティークのビールサーバーが中央に置かれている


10人も入れば一杯のスペースの中央に、ビールサーバーが2つ。昭和初期のカラン(蛇口)を復刻した“昭和のサーバー”と、現代の飲食店で使用されている“平成のサーバー”を注ぎ分ける。

“昭和”は流量が多くて旨みが出しやすくやわらかい泡が特徴。“平成”はキリッとシャープで泡がもっちり。

ビールを注ぐスピードや泡の立て方で、9種類の味に変化させていく。

「アタック、スピード、泡の量、グラスの角度。こうした技術と同じくらい、注ぎ手のビールに対する思いや姿勢が重要だと思っています」

「最初の一杯は一度注ぎがおすすめですよ」と重富さん。“一度注ぎ”は一回で一気に泡まで注ぎきる。勢いよくビールを注いで粗い泡を作るのがポイントだ。

この泡がパチパチと弾けながら、喉を駆け抜けていくような爽快感がすこぶる旨い。

適度に炭酸を逃しながら注いでいるから、グビグビと飲み干せてしまう。

そして、重富さんの注ぎの醍醐味を味わうなら“三度注ぎ”に尽きる。モコモコの泡もフォトジェニックだが、その味わいの変化に驚かされる。

まずグラスの底にビールを勢いよく当て、その衝撃で泡を作る。ビールと泡が1対1になったらあと2回繰り返して雲のように泡を立たせていく。

こちらは「三度注ぎ」の一度目の注ぎ。グラスの底に思いっきり当てるのがポイント。数々のビール注ぎの達人がいる全国の名店を巡り、研究を重ねてきた重富さん

「泡立てるほどビールに含まれる炭酸とホップの苦みとタンパク質が減り、その3つの成分で隠れていた旨みを引き出せます。ビールの泡は蓋の役目と言われていますが、私は泡が味を左右する要素だと思っています。

泡は見た目、口当たり、喉越し、そして味わいを担う。日本人は、特に口当たりのいいものを好む傾向にある。だから、私は泡にこだわるのです」

三度注ぎ。ビールを泡立てると、泡に苦みが吸着されて旨みを感じる。炭酸が適度にぬけ、優しい喉ごしに。ふわっとした泡は、うっとりするほど美しい。¥550

唇に触れるとスッと溶けていくやわらかな泡の感触が楽しく、一度注ぎとは一転、ビールはなめらかでスムースな喉越し。

飲み比べてみると、同じビールなのに驚くほど味の違いがわかる。

「日本のビールはそもそも美味しいはずなのに、提供する側の理解不足でその美味しさが引き出せていない。だから、正しい知識を伝えていくことは、酒屋としての私の役割なのです」

“注ぎ”にこだわる男の究極の一杯。その背景には、酒屋としてビールの美味しさを伝えたいという矜持があった。

訪れれば生涯一のビール体験になることを約束する。

Photos/sono@bean, Text/Ayano Sakai@verb

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この記事へのコメント

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No Name
載せないでほしかった…(T_T)
2018/06/24 08:046
yn
重富さんの弟子の山本さんのお店
中野の麦酒大学もそのうち東カレの取材がくるかも‥!?
2018/06/24 22:450

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