言わずと知れた和食の名店が『かんだ』。ミシュランの三ツ星を11年も連続で獲得しているといえば、その実力は伝わるはず。
そんな名店で10年もの間、腕をふるっていた料理人が満を持して独立。新富町に和食店をオープンした。
すでに満員状態が続いているという、その和食店の実力とは?
最旬にして最上の和食は、モダンな白い世界で供される
『久丹』
銀座からタクシーでワンメーター。かつては、歌舞伎の劇場が立ち、芝居興行の中心的存在でもあった新富町界隈。
今、この地が、銀座や東銀座に次ぐ新たな美食スポットとして密かに注目を浴び始めている。
それというのも、ここ数年、イノヴェイティヴ フュージョンを標榜する『チウネ』、名門『京味』出身の和食店『味ひろ』などなど食通垂涎の話題店が次々に誕生しているからだ。
こうした状況の中、またひとつ、未来の名店を志望する一軒がオープンした。この4月7日、人知れず暖簾を掲げた日本料理店『久丹』がそれだ。
ご主人の中島功太郎さんは、地元福岡の和食店を皮切りに、鮨屋での修業を経て、ミシュランの三ツ星和食店、元麻布『かんだ』で10年間、みっちりと薫陶を受けた実力の持ち主だ。
「店名の“久”は永久の“久”で、次の世代まで店を残したいから。一方、“丹”とは、食欲をそそるあかい色を指す言葉。と同時に、丹の文字には“まごころ”という意味も含まれているんです。
お客様にまごころをこめて、食欲をそそる料理を出していきたい―。そんな思いをこめて名付けました」とは中島さん。
白を基調としたシンプルモダンな店内は、凛とした趣の中にもどこか和らぎを感じさせる静謐な和空間。
それは、角を丸くとった壁の設いや、檜ではなく敢えて欅で拵えたカウンターのどっしりとした存在感のせいだけではない。
中島さんが、客を迎え入れる際に見せる屈託の無い笑顔と自然体の応対、それが、店全体の空気をなごませている大きな要因だろう。
「『かんだ』では、食材選びにストレスを感じることなく、最上級のものだけを扱えました。それが今の自分にとって一番の財産」だそうで、それによる引きだしの多さも彼の強みだろう。
加えて、割烹料理の真骨頂とも言えるフレキシブルさも身につけている。
それゆえ、客の飲んでいるお酒や年齢、来店の頻度によって料理の献立を変えるのはもちろん、時には客のリクエストに応えて即興料理が登場するお楽しみも。
そんな遊び心を兼ね備えている反面、和食の命である出汁への思い入れの深さは人一倍。
中でもお椀には一家言あり、で素材も厳選。昆布は北海道の尾札部産天然真昆布一等検。
これを2時間水出しし、枕崎の本枯節を使ってとる一番出汁は、淡さの中に旨みの底味がしんみりと味蕾に広がる佳品。
食べ進むうち、椀種の海老真薯から滲み出る甘みや塩味となじみあい、徐々に変化していく出汁の余韻の深味はまさに和食の花と呼ぶに相応しい。肩肘はらずに味わいたい。
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