
明朗会計、本格派。鮨好きを生む新機軸
さて、今宵は旨い鮨でも食べに行こうか。都内の鮨店マップを思い描いてみると、新宿は随分手薄なことに気づく。敢えてその地で店を開いたのは「激戦区ではないところにチャンスがあるから」と森田忠保さんは言う。さらに「若い人も多い街だから」とも。
わずか6席の店内は、白木の戸棚が目に爽やかな凛とした空間。銀座の高級店かと見紛う品格がある。ネタは魚屋で生まれ育った森田さんが築地で目利きし、陶芸家に依頼したオリジナルの皿で提供する。この道を究めゆく職人として、構えに隙はない。
ところが値段は驚くほど手頃で、内容も明朗そのもの。握りだけを味わうのか、つまみとセットで楽しむのか、メニューにそれぞれの品数と料金を明記する。
それは若い人にも本物の鮨を気軽に試してほしいという願いから生まれた仕掛けでもある。「自分にも、若い今しかできないことがありますから」。志は高く、ハードルは低く。その気概が新たなる鮨好きを生み、若き職人の未来を支えていくのだ。