2018.05.21
SPECIAL TALK Vol.44熱中した野球を辞めて、何もしない日々を過ごす
金丸:帰国して、すぐ日本の学校になじめましたか?
梅田:意外にスッとなじみましたね。トヨタの城下町である愛知県岡崎市の公立小学校に通い始めたんですけど、まず野球にハマりました。
金丸:アメリカでも野球を?
梅田:全然やっていませんでした。というより、外で近所の子どもたちと遊ぶ文化がなかったです。隣の家が遠すぎて家の中でひとりで遊ぶか、たまに友達が遊びに来るぐらいで。だから公園でみんなと一緒に野球をするのが、本当に楽しくて。暇さえあれば野球をしていました。仲間と一生懸命練習して、試合で勝っては泣き、負けては泣き、みたいな野球少年でしたね。中学校でも野球を続けました。
金丸:勉強のほうはどうでしたか?
梅田:どちらかというと、できるほうでしたが、めちゃくちゃできるわけじゃなくて、ティア2(自動車産業における用語。自動車メーカーと直接取引する企業をティア1、その下請けをティア2と言う)くらいですね。
金丸:ティア2(笑)。さすが自動車の町で育っただけありますね。
梅田:学級委員にはなっても生徒会長にはなれない。野球部でもキャプテンではなく副キャプテン。高校も岡崎には、岡崎高校という非常に有名な進学校があるのですが、僕が行ったのは岡崎北高校という、やっぱりティア2の高校で(笑)。
金丸:高校でも野球を続けたのですか?
梅田:入部して2週間で辞めました。
金丸:それはどうして?
梅田:高校の野球部って、練習の厳しさが一段上がるんですよ。小学校から熱中してあれだけ楽しかった野球が、つらいだけで全然楽しくない。高校生になったんだし、もっと遊びたいと思って辞めたんですが、田舎だからとくにすることもない(笑)。結局、友達とコンビニの前でたむろして、おなかが空いたら家に帰ってという毎日でした。情熱を傾けられるものがずっと見つからないまま過ごしていましたね。
海外の一人旅で自由を満喫。生きるうえでの指針を得る
金丸:その後、大学はどちらに?
梅田:横浜国立大学の経営学部です。高校では勉強も大してしなかったので、下から数えたほうが早いくらい成績も落ち込みました。このままじゃいけない、大学に行ったら何か変わるかもしれないと思い、3年生から猛勉強して。ただ3人兄弟なので、国公立しか選択肢はなく、どこかに入れないかなと。
金丸:地元を離れたいと思ったわけではなく?
梅田:それはあまりなかったですね。でも関東に出ても知り合いがいないので、同級生の稲垣に声をかけました。
金丸:共同創業者の稲垣裕介さんですか。高校の同級生なんですね。
梅田:はい。稲垣は高校1年のときに同じクラスで、名簿順で隣同士だったのがきっかけで友達になりました。僕は文系だけど、彼は当時から「ザ・理系」という感じで、ひとりはさびしいから、稲垣も連れていこうと。
金丸:割と自分本意な(笑)。
梅田:そうですね(笑)。稲垣は愛知県内の大学を受ける予定でしたが、願書を出す前に「関東って楽しそうじゃない? どこでもいいから関東にしてくれ」と。それで埼玉大学の工学部に。
金丸:梅田さんの都合で稲垣さんの人生を変えてしまった。しかし、稲垣さんもよく付いてきましたね。
梅田:彼も進学先に強い思いがあったわけじゃないので(笑)。
金丸:強くないから、より思いのある梅田さんの意見に従った。
梅田:でも上京してわかったんですが、横浜と埼玉ってめちゃくちゃ遠い(笑)。それでも最初は、お互い2時間くらいかけて通いながら遊んでいました。あのとき稲垣に声をかけていなかったら、ユーザベースは起業できなかった。無理やり連れてきてよかったです(笑)。
金丸:大学生活は、どうでしたか?
梅田:とにかく熱中するものが欲しくて、横浜でしかできないことがしたいと体育会のサーフィン部に入ったんですが、1ヵ月ほどで辞めました。練習がものすごく厳しくて。でもこのまま何もない人生は嫌だと思い、世界を旅することにしたんです。早めに単位を取ってバイトでお金をためて、アジアを中心にひとりで回りました。とにかく世界をいろいろ見ておきたくて。
金丸:その旅で何か得るものはありましたか?
梅田:大いにありました。予定は決めずビザが許す限り、お金が許す限り、あとは気のおもむくままに旅をしたんですが、これがめちゃくちゃ楽しかった。誰かに決められるのではなく、自分の本能に従って自由に生きるのが好きなんだとわかりました。だから就職活動のとき、ある本に「プロフェッショナルになることは、自由を手に入れることだ」と書いてあって、これだと思いましたね。学生なりの浅い考えで、公認会計士や弁護士などプロフェッショナルの仕事をいろいろ検討して、現実的になれそうだったのが、コンサルタントだったんです。
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