
~自分が心から欲しいと思ったからこそ、強いサービスを作り上げることができた~
ハードワークのなかで、不便なツールに疑問を持つ
金丸:それでコンサルティングファームに就職したんですね。
梅田:はい。ただ、入社してから本当に苦労しました。周りがみんな優秀で、頭の回転に全然ついていけなくて。僕にできるのは、人よりも倍働くことくらいでした。あんなに働いたことはないんじゃないかというくらい働きましたね。
金丸:ハードワーカーだったんですね。
梅田:それでも3年経つと仕事がこなせるようになって、ちょっと視野も広がりました。そしたらもっとグローバルなことを経験したいと思うようになり、外資系のUBS証券に転職しました。
金丸:その頃には、英語を話せるようになっていたのですか?
梅田:いや、できないままです(笑)。ただ履歴書だけ見れば、できそうじゃないですか。英語の面接が1回だけあったので、突破するために作戦を立てまして。自分が話すことを丸暗記して、あとは質問しまくる。すると面接担当者が答えてくれるので、時間がどんどん過ぎていく。
金丸:なるほど。それは作戦勝ちだ(笑)。
梅田:でもやっぱり入社してからが大変でした。
金丸:ばれちゃった?
梅田:完全に。「おまえ、本当に帰国子女か?」と言われる始末。必然的に英語が関わる仕事は任せてもらえず、日本語だけの仕事になりました。でも体力だけはあったので、そこは買われていましたね。僕は一番下っ端だったので、あれを調べろ、これを調べろとあらゆる指令が飛んできて、仕事の大半が統計データや企業の財務データ、経済ニュースなどの調べものでした。毎日情報の海に溺れていました。
金丸:そういう調べものの時間は、もっとイノベーティブなことに使うべきですよね。
梅田:本当にそう思います。それに情報収集にはいろいろなツールを使うのですが、これがとにかく使いにくかったんですよ。UBS証券に入ってまずやることは、ツールを使うための訓練なんです。分厚いマニュアルがあって、ツールを提供する側から人が派遣されてきて教わっていると、ふと「これっておかしくないか?」と。そのとき頭に浮かんだのが、グーグルです。初めてグーグルを利用したときの感動は、今でも忘れません。すごく直感的で、自分が必要とする情報にすぐアクセスできる。それに比べたら、このツールの使いにくさは何だろうと。
金丸:BtoCのサービスはユーザーに合わせるけど、BtoBではユーザーがサービスに合わせている。いまだによくあることです。
梅田:ビジネスの世界には、どうしてグーグルのようなシンプルなツールがないんだろう。ないなら、自分で作ればいい、と思うようになりました。
金丸:それが出発点なんですね。
梅田:最初は社内システムとして提案しようと思い、稲垣に電話しました。僕はシステムのことはまったくわからないので。稲垣は当時、アビームコンサルティングでデータベースのエンジニアをしていました。
金丸:ここで再び稲垣さん登場だ。
梅田:こういう相談ができる友達は、彼しかいなくて(笑)。それで構想を練っていくうちに、「これは何もUBS証券だけの問題じゃない。日本だけじゃなく、世界共通の問題だよな」と。
金丸:下っ端として業務をどんどん引き受けていたからこそ、気づけたのでしょうね。手を抜いたり楽をしたり、大して作業を頼まれていなかったら、その発想には至らない。
梅田:自分がユーザーとして困っていたので、自分の欲しいものを作ろうという単純な発想なんですが。それから僕と稲垣、そして新野良介の3人でユーザベースを立ち上げました。UBS証券の同僚のなかで唯一、「そういうサービス、絶対に必要だよね」と共感してくれたのが、新野でした。