花の第1営業部 Vol.8

「それってお前にしかできない仕事か?」転職を決めた同期からの、胸を抉られた一言

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

後輩の航が競合プレゼンの主導権を握り、チームメンバーの信頼を奪われそうだったものの、企画のキーとなるテレビ局との調整クライアントキーマンとの会合を乗り切り徐々に信頼を取り戻して臨んだ競合プレゼンは、まさかの結果となった。

ショックを受ける瑛太にはさらに追い討ちをかける出来事が。そんな時に、戦友の浩司から連絡があった。


「突然どうしたの?まぁ俺もこの前突然だったけど」

瑛太の同期で、今やデジタルイノベーション部のエースと言われている浩司から、急に時間が欲しいと言われたのが、つい数日前。

瑛太と浩司は銀座の『とりや 幸』に来ていた。

今日のように「急に時間が欲しい」という時は、何かの相談や報告であることがほとんどだ。

昔は、結婚の報告というのがほとんどだったが最近は、

「俺、実は会社を辞めようと思って」

-やっぱりこれか。

浩司の突然の告白に驚きつつも、ある意味予想していたことでもあった。

-デジタルに強い浩司のことだから、どこかのITベンチャーに役員などで引き抜かれるのか、それともエンジェル投資家にでも出会って、何か自分で会社を立ち上げるのか。

これまで、瑛太の会社は比較的転職・退職が少なかった。だが昨今、特にデジタル分野の若手が会社を辞めて、独立することが増えてきたのだ。

「そっか、なんか突然の連絡だったから、そんなことかなーとは思ったけど。で、何するの?」

「もうちょっと驚いてくれよ!俺も結構考えた末の決断だったんだからさ」

そうして聞き出した浩司の決断の理由は、瑛太の想像を超えるものだった。

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