花の第1営業部 Vol.2

花の第1営業部:代理店マンが夜な夜な開く“会合”には、女には分からぬ駆け引きがあった

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

瑛太は、新型車広告キャンペーンの競合プレゼンでチームリーダーを任されるが、後輩の航(わたる)がサブリーダーに抜擢され、密かに焦りを感じていた。


「瑛太さん!ちょうど今、僕も部長から呼ばれて聞きました。今度の競合プレゼン、よろしくお願いします!」

今度の競合プレゼンはクルマ離れが進む若年層に向けて、瑛太のクライアントである自動車メーカーが投入する肝入りの、新型車のローンチキャンペーン。

これまでのキャンペーンは、圧倒的なリーチ力を誇る「テレビ広告」が中心だった。

テレビの専門部署に長くいた瑛太にとっては、まさに得意分野で、クライアントからも社内からも信頼が厚かった。

だが、今回は「若年層」がターゲットということもあり、クライアントとしても今まで対応が遅れていた「デジタル戦略」をこのキャンペーンから一気に加速させたいという意向がある。

そのため、デジタル専門部署の経験がある航がサブリーダーに抜擢されたのだ。

「おー、航。ちょうど今俺も本部長から聞いたところだ。よろしくな!しかも今回はデジタル戦略が中心らしいからな」

「はい、任せてください!瑛太さん、デジタル戦略系は苦手ですもんね」

航はあっけらかんと笑う。彼に悪気がないのは百も承知だ。

だが、飲み会の場での先輩いじりは可愛げがあるが、今の瑛太には本当の嫌味にしか聞こえない。

「じゃあ瑛太さん。早速キックオフミーティングをするために、サブリーダーとしてチームメンバーを招集しておきますね!デジタル戦略が中心のプレゼンになりそうなので、僕の古巣のデジタルイノベーション部のメンバーにも声かけておきます!」

航はそう言って、瑛太の返事もろくに聞かずに歩き出す。

いつも以上に張り切っている航の背中をみて、頼もしさと同時に脅威を覚える瑛太がいた。

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