
花の第1営業部:40歳までに部長になる!広告代理店の花形部署で働く男(35歳)の野心
まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。
彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。
華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。
慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。
エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?
これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。
「いらっしゃいませー!」
木曜日の夜。
瑛太は、第1営業部・通称「1営(イチエイ)」で1つ下の小田原航(おだわら わたる)と、3つ下の松浦浩輝(まつうら ひろき)と一緒に、西麻布の『CHECK』で、“会合”を開いていた。
広告代理店の社員は、クライアントとの接待や社内の懇親会も、女の子との食事会も、そしてデートまで、全てを“会合”と呼ぶ。
先輩から残業を命じられても「すみません、今日ちょっと会合が入っていまして…」と言って、残業を回避しつつ食事会を楽しんでいるなんてことは、よくある話だ。
「花の第1営業部、通称“イチエイ”所属。一ノ瀬瑛太です。35歳、独身。その名の通りみんなからは『イチエイくん』って呼ばれてます。今日も楽しく飲みましょう!いらっしゃいませー!」
乾杯の時「いらっしゃいませー!」というのが瑛太の口癖だ。
浩輝と航は、そんな瑛太を見てうんざりした表情を見せながらも、淡々と会を進行していく。
「それにしても瑛太さん、今日はいつもよりもテンション高いな」
「たしかに。やっぱり今日は相手がモデルだからかな。瑛太さんモデル好きだからなぁ」
浩輝と航がヒソヒソと話している姿を見て、すでに少し酔っ払った瑛太が絡みにいく。
「いや~実は俺、今日本部長から呼ばれたんだよ」
瑛太は、気を抜くと緩みそうになる頬に、ぐっと力を入れながら、ご機嫌な理由を話し始めた。
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