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花の第1営業部 Vol.1

花の第1営業部:40歳までに部長になる!広告代理店の花形部署で働く男(35歳)の野心

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「失礼します。一ノ瀬瑛太、入ります」

「おお一ノ瀬、忙しいところ悪いな。ちょっとそこに座ってくれ」

本部長は、落ち着いた様子で目の前の椅子を指差した。そして、瑛太が椅子に座ったのと同時に口を開いた。

「勘の良い一ノ瀬のことだから気づいているかもしれんが、今度競合プレゼンがある。新型車のキャンペーンということもあって、予算も今年で最大だ。絶対に負けられないこの競合プレゼン、一ノ瀬にチームリーダーをやってもらおうと思う。どうだ、やってみないか?」

競合プレゼンの、チームリーダー。

もちろん競合に勝てば部長昇格への大きな足がかりとなるが、負けると大きく後退する。どっちに転ぶかわからない。

ただひとつだけ分かっていることがある。

この機会を逃すと、次にいつチャンスが回ってくるかわからない。

瑛太の心は決まっていた。

「もちろんやらせて頂きます!絶対に勝って、ご期待に添えるよう、頑張ります!」

瑛太は力強く答える。

「そうか、良かった」

本部長はゆっくりと頷いたあとに、ある条件があることを付け加えた。

「クライアントからのオリエンによると、今回のキャンペーンは、デジタル戦略中心でプランニングして欲しいということだ。一ノ瀬、お前はテレビにはめっぽう強いが、デジタル戦略のことは、正直全然わからないだろ。だから今回は、同じ部の小田原航をサブリーダーにしたいと思う。二人で力を合わせて頑張ってくれ」

昨日も一緒に飲んでいた航は、デジタル戦略専門部署の出身。したがって、デジタル戦略に関しては、部署で一番詳しい人材だ。

−まさか、航がサブリーダーか。しかもデジタル戦略が中心のキャンペーン…。

これまでの広告キャンペーンは、「マス広告」と呼ばれる、テレビに代表されるマスメディアを活用したキャンペーンが主流だった。

瑛太はテレビ専門の部署の経験が長く、そういった意味でも部署の中で中心的な存在だった。

しかし、昨今広告のトレンドも移り変わり、デジタル戦略を重視するクライアントが増えてきている。

「瑛太さん!」

席に戻ると、同じタイミングで部長から話を聞いたという航が声をかけてきた。

「今度の競合、一緒に頑張りましょうね!」

チームリーダーを任された競合プレゼンが、航の得意なデジタル戦略。いつもだと頼りになる後輩の航に手柄を取られるかもしれない…。そんな焦りが、無意識のうちに芽生える。

瑛太は初めて、航が自分の出世を脅かすライバルに見えた。



▶Next:3月20日 火曜更新予定
早くも部長昇格に暗雲?後輩・航が大活躍。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。



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この記事へのコメント

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最初の会合での自己紹介といい、「いらっしゃいませ」という乾杯の掛け声が寒すぎて吹いた(笑)
2018/03/13 06:0299+Comment Icon8
No Name
35歳独身がクソサムい乾杯コール、しかも決定してないことをみんなの前でペラペラ喋る、無理でしょ。笑
2018/03/13 08:2799+Comment Icon1
No Name
なんだか、心が痛い
2018/03/13 06:2355
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花の第1営業部

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

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