花の第1営業部 Vol.7

「まさか、俺が?」一度の失敗で“後輩の部下”という立場に追いやられた男の本音

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

後輩の航が競合プレゼンの主導権を握り、チームメンバーの信頼を奪われそうだったものの、企画のキーとなるテレビ局との調整クライアントキーマンとの会合を乗り切り、徐々に信頼を取り戻し、臨んだ競合プレゼンは、まさかの結果となった。


「失礼します。一ノ瀬瑛太、入ります」

初めてチームリーダーを任された競合プレゼン。その敗退が通達された翌日、瑛太は本部長のデスクに呼ばれていた。

先日、チームリーダー任命の打診を受けた時とは打って変わって、その足取りは重かった。

「あれ、航?」

ドアを開けると、そこには意外な人物・航がいた。今回のプレゼンを一緒に準備していた、サブリーダーだ。

-これはどういうことだ?

困惑する瑛太に、本部長が淡々と話し始める。

「君にチームリーダーをお願いした競合プレゼンの件、非常に残念だったよ」

普段から冷静沈着で表情を変えない本部長だが、この日ばかりは、その目の奥に怒気を含んでいた。

「やはり先方の判断としては、“デジタル戦略”中心、ということだったようだね。私が言った通り」

実は、本部長から直前に代案の検討を指示され、プレゼンに臨んだ。

ただし、チームリーダーである瑛太の判断で、それとは別の案を一押しとした。チームメンバーの総意であると信じていたため、瑛太は後悔していない。

ただ、本部長にはそれが非常に気に食わなかったようだ。

少しの沈黙の後、本部長が放った次の言葉が、会議室に密やかに響いた。

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