花の第1営業部 Vol.4

何が何でも成功させたい案件がある。男が男を口説き落とすため、準備した秘策とは?

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

後輩・航が競合プレゼンの主導権を握り、チームメンバーの信頼を奪われそうだったものの、同期の助けもあり、再び瑛太にもチャンスが回ってきた。


「このままだと、この競合プレゼン、負けるな」

会議の途中、瑛太はおもむろに言い放った。

競合プレゼンの準備を始めて約2週間が経過していた。

当初は、デジタルイノベーション部出身のサブリーダーである航が意気込んで準備を進めていたが、ここに来てチームは暗礁に乗り上げようとしていた。

「たしかにクライアントは、デジタル戦略中心の提案を求めている。けど、デジタル戦略“だけ”を求めてるとまでは言ってない。だからさ、デジタルを活用しつつ、他のメディアを組み合わせるというのはどうだろう?」

これまですっかり影を潜めていたチームリーダー・瑛太の発言に、皆の注目が集まった。

そして、最初に口を開いたのは、瑛太の予想通り航だった。

「もちろん確かに他のメディア、特にテレビのような影響力の強いメディアと組んで何かキャンペーンが出来れば、今の課題は大きくクリア出来ると思います。ただテレビ局と組んで何か仕掛けるというのは、ハードルが高いと思って」

これまで意気込んでチームを引っ張っていた航は、そんなことは自分も考えていた、と言わんばかりの口調だ。

「だからこそ、そこをなんとかするんだよ!」

これまで後輩の航に奪われていた主導権。それに比例するように失われつつある、チームリーダーとしての信頼。

それらを取り戻すように、瑛太はあえて力強く、語気を強めて言った。

「俺は正直、デジタルのことが苦手だ。みんなにも頼りないリーダーだと思われていると思う。けど、この競合プレゼン、みんなで絶対に勝ちたいんだ」

いつものおちゃらけた瑛太とは違うトーンに、皆は意外そうな目で見つめてくる。その反応は、決して悪くない。

瑛太はそう確信した。

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