宿題1:2対2の席で、女性から見たNGポイントはどこか答えよ
「こんばんは。お二人ですか?」
俊明は物怖じもせずに話しかけに行く。その後ろで、僕は静かにその様子を見守っていた。
「あ、はい...」
「良ければ、一緒に飲みませんか?」
俊明のオファーに、女性二人組は“どうする?”と言いながら一瞬考えていたようだ。しかし結局、俊明の押しの強さに負け、一緒に飲むことになった。
そして、ここから僕たち4人の思惑が交差していくのだー。
「ちなみに名前は?僕は俊明って言います。こっちは同僚の弘人です!」
「私はリナで、こっちは沙奈です。お二人は、どうしてここに?」
まずは、華やかな方・リナが会話を盛り上げていく。場慣れしているのだろう。上手に僕と俊明に対し、交互に会話を振ってくれる。
その一方で、隣の沙奈は終始ニコニコしながら静かに話を聞いていた。
「沙奈ちゃんは、何をしているの?よくこの界隈で飲むの?」
「普段は中目黒とかにいます。あまり六本木には来ないですね...」
問いかけに対し、沙奈はおっとりとした口調でのんびり答えていた。一方、俊明とリナは二人で大いに盛り上がっている。
「へぇ。じゃあ俊明さんは丸の内に勤めるエリートなんだ。こんな所で女性引っ掛けている場合じゃないですよ(笑)」
「そういうリナちゃんこそ。どうしてこんな美人が金曜の夜に女二人でいるの?世の中の男は見る目がないね〜」
二人の調子の良い会話を聞きながら、小さくため息をついた。
2対2でいると、必ずこういうことが起こる。
どちらかの組は盛り上がり、もう一方は盛り上がらずに貧乏くじを引くことがあるのだ。
二人とも可愛いけれど、男が好きそうな華やかさと明るさを兼ね備えているリナは、近くで見るとより魅力的だ。
「リナちゃん可愛いから、彼氏何人もいそうだよね」
またしても、俊明とリナの会話が聞こえてくる。今日のアタリは、確実にリナの方だ。
—俊明、いいところ持っていったなぁ...。
その後も、俊明はリナのネイルがきれいだとかスタイルが良いとか、女性が喜びそうなテッパンの文句を並べ立て、リナも笑い声をあげていた。
一方で、僕は沙奈を前にして、うまく盛り上げられずにいた。彼女も見た目は可愛いけれど、何を話して良いのかわからない。
リナのように分かりやすいリアクションをしてくれて、且つ会話を回してくれる子の方が初対面でも盛り上がれるし、話しやすい。
そのとき、俊明がこんなことを言い出した。
「僕さ、手相見られるんだよね」
—出たよ、このパターン...。
俊明は、食事会やこういう場で毎回同じようなことを言って、女性の注目を集めている。
「さっきから気になっていたんだけど、リナちゃんって手小さくない!?ほら、僕の方が第一関節分大きいもん」
そう言って、俊明はさりげなくリナの手を触りながら距離を縮めている。
沙奈はそんな二人の様子を面白そうに見ているだけだ。僕も頑張って話しかけてはいたが、隣の二人のようには盛り上がれずにいた。
僕は少し手持ち無沙汰で、グラスの氷を何度もカランと回す。
男友達が気に入った女性に、手を出す悪趣味はない。
今日は楽しく飲もう。そう決めてそっと静観していた。
この記事へのコメント
あと、地味な女友達をちゃんとフォローしてくれるか無視するかって、女性はよく見てる。
弘人が好みのタイプのイケメンだった