京都ちゃん Vol.7

稼いでいても“サラリーマン”はお断り。家柄と資産が何より大事な、京おんなの結婚観

生粋の京おんな・鶴田凛子(26歳)は、西陣で呉服店を営む京野家の跡取り息子・京野拓真と婚約中だ。

義母の過干渉に苦しむ凛子に、昔ささやかな恋心を抱いていた竜太から食事の誘いが。

拓真に嘘をつき密会した凛子は、竜太の言葉に心が揺れてしまう。

義母の横暴はますますエスカレートし、婚約者・拓真の事なかれ主義に凛子は我慢の限界を迎える。

そしてついに「婚約破棄」を考え始める。


あの夜のこと


「やっぱり京都は、和食やね」

鼻からふわりと抜けていく、優しい出汁の香り。

その上質さは、「日本人で良かった」と感じずにいられない感動がある。

茶道のお稽古帰り。親友・ゆりえとランチにやってきたのは、上賀茂にある『京 上賀茂 御料理 秋山』

とにかく予約が取れないことで有名な店だが、ゆりえがどこからか枠を手に入れて凛子を誘ってくれたのだ。

閑静な住宅地に佇む、風情ある古民家。お稽古帰りにお着物で伺うにもふさわしい、実に京都らしい名店である。


「そういえば、この前どこ行ってたん?」

思い出した、といった様子でゆりえに問いかけられ、凛子は思わず目を瞬かせる。

「えっ、この前って…?」

…そう訊ね返したのは、時間稼ぎのためだ。竜太と密会するため、アリバイ工作を頼んだのは凛子自身なのだから。

平静を保ってから、何事もないように答える。

「ああ、わかった、あの日やな。あの夜は、実は…竜くんと会うてたんよ」

「え…竜くんって、あの竜太くん?」

凛子の口から意外な名前が飛び出したものだから、ゆりえは目を丸くしている。

「うん、そうそう。京大出て東京に行った竜くん。今は六本木のIT企業で働いてるんやって。

あの日、たまたま京都に戻ってて、四条の店で母と顔を合わせたとかで連絡があってね。それで久しぶりに食事でもしよか、って。…ごめんね、変なこと頼んで」

何気ない風を装ったつもりだが、饒舌すぎたかもしれない。

「…ふーん、そうなんや」

ゆりえは、明らかに何かを察した様子だった。

【京都ちゃん】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo