“ゆとり”のトリセツ Vol.7

“ゆとり”のトリセツ:いくら金を稼いでも心は満たされない。成功したはずの男が港区で感じる孤独

高学歴、高収入、容姿端麗。誰もが羨むハイスペにも関わらず、その実態は信じられないほど地味だ。

趣味はNetflix、たまに港区おじさん・水野と出かけるのは庶民的な餃子屋。

何事も「楽に、効率的に」が大原則のゆとり世代・瑞希だが、水野に半ば巻き込まれるような形で、プロボノ活動に参加することになってしまう。

仕事と割り切り適度に取り組んできたつもりだったが、それを指摘されてしまい…


休日返上でやってきた、田舎町


―ふぅ、間に合った。

念のため、瑞希はバス停の時刻表と目的地をもう一度確認する。

日中でも1時間に1、2本しか通らないバスを乗り過ごすと、この田舎では致命的だ。

駅に向かう最終バスの定刻まで、10分はある。

田んぼの傍に申し訳程度に置かれたベンチに腰掛け、瑞希は先ほど聞いてきた話を思い返した。

休日を返上しても、はるばる来てよかった、と思える訪問だった。

―あとはここからどうするか、ね。

手帳にびっしりと書き込まれたメモを見返しながら思考を巡らす。

3月も半ばに差し掛かり春めいてきたとは言え、辺りが暗くなってくると外は少し肌寒い。

―早く帰って、今日のところはゆっくり休みたい。…願わくば、『タイガー餃子軒』のラストオーダーに滑り込みたい。

そんなことを考えていると、小さなコミュニティバスが砂利をはね散らしながら反対方向へ走り去っていった。



―…遅くない!?

腕時計を確認すると、バス停に記された時刻を既に15分は過ぎている。

日は完全に沈み、肌寒いを通り越して瑞希の指先は凍え始めていた。

流石に何かがおかしいと、再びバス停の表示を確認しに立ち上がった、その時。

瑞希は、あることにふと思い当たる。

―…もしかして・・・!?

辺りを見渡し、瑞希は絶望的なミスに気がつく。

この道には、片側にしかバス停が無いのだ。

つまり、反対向きだと安心して先ほどのんびり見送ったバスこそが、瑞希が乗るべき最終バスなのだった。

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