新婚クライシス Vol.17

新婚クライシス番外編:“ポンコツ嫁”に頭が上がらない、心広きドM夫の日常

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

これは、“新婚クライシス”に陥った悩める吾郎を傍観し続けた同僚・松田の、ちょっとした小話である。


―あぁ、疲れた。はやく帰りた.........くねぇな......。

夜のオフィスにて、仕事に一区切りついた松田は、首を伸ばして吾郎の席を覗き込む。

だがその席はすでに空であり、心にピュウと冷たい風が吹いた。

少し前までは自分と同じくデスクでダラダラと過ごしていた吾郎であるが、“新婚クライシス”を脱した途端、彼は元来のワーク・ライフ・バランス重視の生活に戻ったらしく、サッサとオフィスを去ってしまう。

「松田先生、どうしたんですか。そんな亀みたいに首伸ばして」

振り向くと、ナオミが立っている。

スーツから覗くピチピチの美脚に一瞬見入ってしまうが、彼女の目に蔑みの色が浮かんだため、急いで咳払いした。

そういえば、ナオミもいつも一人で遅くまでオフィスに残っている。

「あ、いや別に......それよりナオミちゃん、お腹空いてない?メシでもどうかな。奢るよ」

「私が?松田先生とお食事ですか?今から?」

「あ、もちろん都合が悪かったら無理しなくても...」

ナオミは威圧的なオーラを発したまま、無言でこちらを見つめてくる。

彼女のこういう仕草が吾郎と似ていると思うのは、自分だけだろうか。松田の周囲は、なぜだか強気な変わり者ばかりである。

「...焼肉なら」

しかし数秒後、ナオミは口を尖らせて小声で答えた。

猛獣の手なずけは得意な方であると、松田は自負している。

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