「サトシですっ。渋谷のIT企業で、広告営業やってます!」
いつもお決まりになっている男性陣の自己紹介を終えると、女性陣もそれに続く。
「恵理です。日系の航空会社でCAをしています。 」
「CAさんか〜。すごいね!どこの国に飛んでるの?」
恵理の言葉に、僕はすかさず質問を浴びせる。まずは褒めて、そして話を聞く。これが学生の頃から変わらない、女性への接し方だ。
「全然すごくはないですよぉ〜。一応、今はヨーロッパを担当していて...」
僕の質問に対して嬉しそうに答えている恵理だったが、裕太が横からストレートな質問を投げかける。
「恵理ちゃんは、彼氏いないの?」
「それが、ちょっと前までいたんですけど別れちゃって...」
「ヘェ〜そうなんだ。彼はどんな人だったの?」
「六本木にある投資銀行に勤める、“外銀”の人なんです。」
—ガイギン、ねぇ……。
顔をほころばせながら言う恵理を見て、僕と裕太は思わず顔を見合わせる。すると隣にいる恵理の友人・さゆりが、“外銀男”の話に加わってきた。
「恵理は、別れて正解よ……!外銀の人たちって心がないっていうか…“俺話”が多いし、基本的に話がつまらない人が多いのよねぇ。社会人デビューも多いし。」
隣に座る恵理は、さゆりの言葉に大きく頷いていた。
学生時代の友人で外資系投資銀行へ就職したヤツも何人かいたが、社会人になり、住む世界も遊ぶ場所も変わった途端に交わることがなくなった。彼らの主戦場は“港区”であるため、今となっては、全く関係のない人種なのである。
「たしかに、分かる!無駄にプライドが高い人が多い!」
そこから女性たちは、外銀男たちの粗探しで盛り上がり始めた。
僕はそれを肯定するでも否定するでもなくウンウンと聞きながら、松茸のすだち小鍋を食べていた。
そうやって難癖つけても、女性陣にとって“外銀男”というのは無視できない存在らしかった。
するとそこに、もう一人が遅れてやってきた。
「遅くなっちゃってごめんなさい!」
小柄で細くて顔は手のひらサイズの小ささ。それなのに目が大きくて、目と唇はなぜか潤んでいる。
僕の心は、慌ててぺこりとお辞儀をするその女性の姿に一瞬で奪われた。
「杏奈、遅いよ〜。」
恵理に杏奈と呼ばれたその子は、くるりとこちらを向きなおした。
—あれ?この子、どこかで見た気がする……。
僕は、杏奈から目が離せなかった。自己紹介をしようにも、いつのも調子が出ないのである。
「さ、サトシです。こっちは裕太で、こいつは涼。」
「初めまして。遅くなっちゃってごめんなさい。もう結構飲まれています?私も追いつかないと……ですね?」
そう言いながら笑う顔は、まるで天使のようだ。
他の女性陣とは比べモノにならないくらい、杏奈は輝いていたのだ。
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東カレさんは外銀、商社、広告などが大好物