都内でも住みたい街の上位に、常にランクインする恵比寿。
仲間と肩肘張らず楽しめるお店がたくさんあり、便利で、何より賑やかな街である。
ITベンチャー企業に勤めるサトシ(28)も、恵比寿に魅了された男の一人。
顔ヨシ・運動神経ヨシ・性格ヨシで、学生時代から人気者だったサトシは、その社交性から遊ぶ仲間には事欠かない。何かと便の良い恵比寿は、フットワーク軽いサトシにぴったりの場所である。
まさに典型的な恵比寿に生息する男・通称“エビダン”である、彼の生態を探っていこう。
―サトシ、今夜のお店ここだからヨロシク!
昼下がり、裕太からのLINEに、キーボードを叩く手を止める。裕太は毎週末のように恵比寿界隈で飲んでいる、学生時代からの悪友だ。
趣味でやっているフットサルも一緒のチームに所属していて、会社は違うが毎週顔を合わせている。今でも学生時代と変わらず遊べる友人の存在は、何にも代えがたいものだ。
昔から僕は顔が広くて友達も多いタイプで、学生時代も常に一番目立つグループにいた。それは、社会人になっても変わらない。
裕太がセッティングしてくれた食事会に顔を出すため、その夜は仕事を早めに切り上げ、恵比寿駅の西口に向かった。
金曜の恵比寿西口は、食事会前の集団やデートの待ち合わせ、そして女子会に向かっている感じの女性達で、普段より華やかな雰囲気だ。
相変わらず賑やかなこの街の、金曜日にしか味わえない独特の空気感に酔いしれながら、アトレ方面へと歩き始めた。
僕は渋谷にあるIT企業で広告営業をしており、普段からフットワークが軽い。人と会うことが大好きだし、こうした人脈作りが、仕事に活かされることもたびたびあるのだ。
「よーーし、今日も飲むぞ!」
独り言のように呟きながら気合いを入れ直し、僕は本日の食事会の舞台である『くおん』へと向かった。
しかし、僕は全く想像していなかった。この晩がキッカケでとある人物と再会し、これまでの人生に疑問を持つようになるとは。
そしてそれは、30代が迫った僕の人生の、波乱の幕開けでもあったのだ。
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東カレさんは外銀、商社、広告などが大好物