SPECIAL TALK Vol.37

~一度きりの人生だから、やりたいことを精一杯やる~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。規制改革会議議長代理、未来投資会議構成員、経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

「やりたいことをやる」。独立を後押ししたもの

金丸:さて、伊藤忠、カブドットコム、イーバンクときて、そろそろTKPですか?

河野:はい、やっと起業です。

金丸:起業のきっかけは?

河野:当時は新興企業が新興市場に株式公開するのが流行でした。そんな中、「ホンモノの会社」をつくりたいという気持ちが強くなっていきました。それともうひとつ、「これは自分の人生なんだから、やりたいことをやらなきゃ」と思わされることがありました。学生時代の友人が亡くなったんです。

金丸:まだ、これからというときに……。

河野:友人の死をきっかけに、改めて自分の人生を思い返してみて、やっぱり独立したいなという気持ちが強くなりました。そうして、いろいろなビジネスモデルを考え抜いて行き着いたのが、今の会員制の貸会議室という業態です。

金丸:勝算はあったのですか?

河野:ありましたね。すでに私書箱を貸すサービスはありましたが、それよりも時間貸しのオフィスにしたほうが、よりニーズがあるんじゃないかと考えていました。〝コンビニ会議室〞という発想です。伊藤忠時代は共有会議室がワンフロアあり、それをイントラネットで予約して使っていましたが、規模が小さな会社でも10社ぐらい集まれば、共用の会議室が借りられるし、1社5万円として、10社集まれば50万円。月20万円ぐらいのスペースを借りれば、全然損はしないはずだと。

金丸:はじめから順調にいったのですか?

河野:それが最初は苦労しました。六本木で取り壊しの決まっているビルを見つけて、安く借りられたのはいいんですが、まったく予約が入らない。なので自分でホームページを作って、ネットで広告を打ちました。

金丸:ご自分で?

河野:カブドットコムとイーバンクでは、マーケティングもやっていましたから、そのあたりのコツは掴んでいたので。そしたら、すぐに六本木ヒルズに入っている企業から連絡があり、その後は企業だけじゃなく、テレビ番組の打ち上げなども入って、多様なニーズが見えてきました。

金丸:会議室が1,800室もあれば、いろいろな使われ方があるんでしょうね。

河野:最大で2,000人ほど収容できる宴会場から、少人数の会議室まで揃えているので、企業の株主総会や記者会見に使われることもあれば、それこそ金丸さんをお呼びした弊社の上場記念パーティーの会場も、TKPで貸し出しているスペースなんですよ。

金丸:そうだったんですか。立派なホールでしたよね。それにしても、上場企業の6割と付き合いがあるというのは、なかなかないですよ。

河野:そのおかげで企業の方々から、いろいろなかたちでコラボの話をいただいています。

金丸:企業の懐に入り込むには、最適なビジネスモデルと言えるかもしれませんね。

河野:そうですね。最初は貸会議室だけだったのが、イベント運営のお手伝いや飲食の提供などを持ちかけられ、業務の幅を広げていくうちに、遊んでいた空間を再生するだけではなく、事業そのものの再生を手がけるようになりました。

金丸:そういえば、旅館再生も手がけられていますよね。

河野:旅館やホテルの再生は、貸会議室で得た延べ9万社とのつながりが非常に生きてますね。平日は企業の研修会場、土日は個人の宿泊施設というふうに組み合わせることで、稼働率がグンとアップしますから。

金丸:企業とのつながりがあるからこそ、これまで思いもよらなかった使い方が可能になると。

河野:ポテンシャルはあるのに経営がうまくいっていない宿泊施設やレストランは、全国各地にあります。そういった施設と企業のニーズをうまく結びつければ、事業が無限に広がると感じているところです。それに同じような遊休資産の問題は海外にもあって、ニューヨークやシンガポール、マレーシア、ミャンマー、上海でも事業を展開しています。

金丸:今、楽しくて仕方がないでしょう。

河野:そうですね。大変なことは大変ですが、毎日が刺激的で楽しいです。

チャレンジを恐れず、納得した人生を歩もう

金丸:河野さんは最初は大企業に入社されましたが、そこからチャレンジを続けて起業し、現在に至ります。今の若い人たち、特に大企業で働く若者に対して、何かアドバイスはありますか?

河野:やはり「これは自分の人生だ」と自覚的になってほしいということでしょうか。その意識があるなら、決められたレールを歩むもよし、チャレンジしてみるもよし。そこは個人の性格に関わってくるところなので。

金丸:チャレンジするには、本当にいい時代ですからね。

河野:それは間違いないですね。昔よりも何とかなる時代です。上場ひとつ取っても、昔はもっと大変だったはずだし、転職するにしても起業するにしても、今は周りの理解が得やすいじゃないですか。

金丸:河野さんも伊藤忠を辞めたときは、大変だったんですか?

河野:そうですね。両親は伊藤忠に入ったことで大満足だったので、辞めるときは、母に泣かれました。「せっかく大学を出て立派な会社に入ったのに、なんで辞めるの?」って。今でこそ応援してくれていますけど。

金丸:そう考えると、起業が選択肢のひとつとして認められるようになりましたよね。

河野:たとえ失敗したとしても、また大企業に戻ることも可能ですからね。私は会社を辞める前に、転職サービスに登録して、自分の経歴だと年収がいくらもらえるかを確認したんです。

金丸:失敗したあと、また企業に勤めるとしたらどうなるか、シミュレーションしたんですね。

河野:その数字を見て、「よし、大丈夫だ」と決意しました。私はとにかく1回チャレンジしてみたい、という思いで事業を始めましたが、その1回で成功しなかったとしても、終わりなんかじゃありません。だから会社を辞めて羽ばたきたいと思うなら、まずはやってみることが何よりも大切だと思いますね。やりたいことを精一杯やって、納得した人生を歩むのが一番です。

金丸:まったくそのとおりです。やりたいことがあるなら、まずは最初の一歩を踏み出してほしいですね。TKPの成長をこれからも楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。

【SPECIAL TALK】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo