2017.09.21
SPECIAL TALK Vol.36自分なりのやり方で、チャンスを掴み続ける
小林:そうして2年ほど経った頃、突然本社から「本社で販売話法を教えてくれ」と声がかかりました。本社では、私がトークで化粧品を売っていると思っていたようで(笑)。
金丸:とんだ勘違いですね。メイクの腕で売っていたのに。
小林:そう。だから話法なんて持ってない(笑)。どうしようと思って、「ひたすらメイクしてたんです」って正直に話したら、試しに美容部長の顔をメイクしてみろ、と。それが認められて、販売話法ではなくメイクの先生になりました。
金丸:それだけ小林先生の売り方は斬新だったんですか?
小林:私より前の方たちは、「いったん手を握ったら離すな」とか、「片方の眉毛しか描くな」とか教えていましたから。
金丸:買ってくれたら「もう片方の眉も描くよ」ってことですか(笑)。先生は全く違うやり方で、自分の夢に近づいていったんですね。
小林:とはいえ演劇の世界はなかなか遠くて。だから現場を経験したいと思って、演劇のメイクをボランティアでやりました。その代わり、会社の名前を出してくださいとお願いして。夢を追いかけつつも、会社のほうがどんどん発展していったのは、面白かったですね。
金丸:コーセーには何年在籍されたのですか?
小林:33年です。最後の6年は役員もやりました。
金丸:小林先生が働いていた頃は、化粧品の世界といえども男性社会ですよね。反発はありませんでしたか?
小林:そこは知恵を使いました。会議のときは茶色やグレーの服を着て、口紅もつけない。派手にしていくと、対等に見てもらえないので。男と女の会話になってしまうと、そこから真面目な議論に入れなくなりますから。
金丸:男性のほうが女性を〝女の子〞みたいに扱ってしまいますからね。そう見ている〝女の子〞が何か意見すると、男性は「えっ、なんだこの子は。生意気だな」と反感を覚えてしまう。
小林:それで失敗している人を、私はたくさん見てきました。だから、そうならないようにしようと。結果、同僚の男性たちからは「照子さんと出張に行くと、女房がヤキモチを焼かない」と言われていましたよ(笑)。
金丸:それはすごい。男性、女性という枠ではなく、同志として評価されていたんですね。
小林:だから今の女性たちには、かわいい巻き髪はアフターファイブまで封印しなさいと言いたいです。男性と仕事するなら、男と女の会話になる前に、仕事の話ができるようにしないと不利ですよ、と。
金丸:しかし、対等の関係を築けたとはいえ、苦労はあったのではないですか?
小林:もちろんありました。たとえば新しい製品を世に出すには、いくつもの会議を乗り越えて、トップの決済を得るまで粘らなければいけません。それまでにたくさんの難関があるわけだけど、商品化すれば喜んでくれる女性がたくさんいると思うと、それが原動力になりました。そうして、何度も何度も繰り返していくうちに成功も増えていって。挑戦さえすれば、何でも実現できるんだと実感するようになりました。ただ女性って、1回成功しただけだと、まぐれだと思われてしまうんですよね。
金丸:男性は素直に受け入れませんから(笑)。
小林:1回目はまぐれ。2回目は「みんなの協力があったから」でしょう。3回目でようやく「あの人は実力があるんだ」と認めてもらえます。逆に言えば、3回成功すれば、あとはこっちのものなんですけどね(笑)。これも若い女性たちにいつも伝えています。
金丸:こういうことは、小林先生のように、挑戦しないとわからないことですね。
小林:上司やトップとの間に壁があると思い込んでいる人も、結構多いですよね。私にもなかったわけじゃないけれども、でも議論していくうちに、実は「壁」じゃなくて、「人」だということがわかってくる。壁とはわかり合えないけど、人とならわかり合えるじゃない?
金丸:それはすごくわかります。「見えない壁がある」とみんなは言うけど、そんなことはない。だって、「自分のアイデアを邪魔してるのは、あいつだ」って本当はわかってるじゃないですか(笑)。
小林:そうなんです。だから「上司が何を考えてるのかわからない」って言う人には、「上司と話したことある?」と聞きます。上司は上司で「若い者はダメだ」と思い込んでいるだけかもしれない。とことん話してみれば、お互いの壁を乗り越えるきっかけになると思うんです。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
2023.11.21
Vol.110
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
2023.10.20
Vol.109
~世界で一番愛される字を書きたい。世界を舞台に活躍する書道家へ~
2023.09.21
Vol.108
~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~
2023.08.21
Vol.107
~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~
2023.07.21
Vol.106
~日本における医療の弱みはウェルビーイングの浸透で改善できる~
おすすめ記事
2017.08.21
SPECIAL TALK Vol.35
~失敗するからこそ改良点を考え抜く~
2023.09.27
ハラスメント探偵~通報編~
接待で相手を喜ばせようとした言動をセクハラだと訴えられた。その内容とは!?
2023.08.30
ハラスメント探偵~通報編~
同僚の女性に、デスクに置いた“アレ”を「セクハラ」だと訴えられた理由
2015.11.27
金曜美女劇場
伝説と呼ばれた銀座の美ママが語る“出世する男”の条件とは?
- PR
2024.04.23
港区2大新名所・虎ノ門と麻布台。2つの”ヒルズ”で過ごす、最高の休日デートプランとは
- PR
2024.04.24
フルーティーで飲みやすい!渋谷の人気酒場が目をつけた、女性が喜ぶお酒の正体とは
2023.10.11
ハラスメント探偵~解決編~
あなたは当てはまってない!?気をつけていてもハラスメントする人の3つの傾向
2017.04.19
キメの接待はここ!商談を成功へと導く美食自慢の都内名店5選
2015.11.07
ラッキーにも出張で京都に行ったら絶対お薦めの店はココだ!
2015.01.26
あの「スタートアップ」経営者のここぞのチカラ飯 Vol.2
若手スタートアップ経営者たちのパワーの源
20代から30代前半の伸び盛りのスタートアップ経営陣。どんなチカラ飯を食べてサ...
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.04.20
男と女の答えあわせ【Q】
年上彼氏と2泊3日の初旅行。沖縄の高級ホテル滞在中、26歳女が男に幻滅したワケ
2024.04.16
Editor's Choice~fashion~
GWのラウンドが楽しみになる!日本初上陸から新作まで、いま注目のゴルフウエアブランド4選
2024.04.18
Editor's Choice~beauty & wellness~
【動画アリ】TWICE・SANAが出演するCMメイキングも!イヴ・サンローランから新アイコンリップが登場
2024.04.19
大人の週末ToDoリスト
【東カレ的・ハラカドの歩き方】パリ発のカフェや雑誌の図書館まで、注目ポイントを徹底解剖!
2024.04.21
Editor's Choice~hotel~
GWに足を延ばしたいサウナ5選!大自然に抱かれる世界初のガラスドーム型も!