「大企業に入れば、一生安泰」
昔からそう教えられて育ってきた。
有名大学を卒業し、誰もが知っている大企業に入社。
安定した生活を送り、結婚し子供を育て、定年後は年金と退職金で優雅に暮らす。それが一番の幸せだ、と。
財閥系の総合商社に勤める美貴(26)も、そう信じてきたうちの一人。
大企業で優秀な同僚に囲まれ、華やかな生活を送る日々は幸せ、か?それとも…?
目まぐるしく変わりゆく現代社会で、大企業神話に疑問を持ち始めた美貴の成長物語。
「聞いて。この間の食事会、最悪だったのよ」
美貴は今日、恵比寿の『ビストロ アム』で、定例の女子会だった。乾杯したとたん、同期の杏奈が先週行ったという食事会の話を始めた。
(※こちらの店舗は、現在閉店しております。)
杏奈が明らかに不満そうだったので、「どうしたの?」と聞くと、こう言った。
「男性陣は大手証券会社勤務って聞いてたのに、それは一人だけで、あとは聞いたことないような会社の人だったの」
その話に、美貴は心から同情した。
美貴と杏奈は、財閥系総合商社の一般職だ。食事会をセッティングするとき、相手の男性が大企業勤務であることは、暗黙の了解である。
その時、美貴のスマートフォンが鳴った。
―お疲れさま。日曜日は会える?
2つ年上の彼氏・優太からのLINEだった。早稲田政経卒でメガバンク勤務。1年前、食事会で出会った。
美貴はこれまで、自分と同じような経歴を持った男性(つまり大企業勤務のサラリーマン)以外、付き合ったことはない。
それは美貴の生い立ちを考えれば、ごく自然のことだった。
この記事へのコメント
大企業=一生安泰という神話が崩れ出したのも最近の話ではないと思いますが。
一体いつの時代のお話なのでしょう。
皆さん、21歳、22歳の大学卒業生が、どれだけ安定志向で、有名企業、大企業にはいりたがるか、わかっていらっしゃられない。
昔より悪化してますよ?
既に社会人生活を長く送られてる皆さんの言っていることは、正論ですが実態と離れてる。
一流大学の若者の就職活動の現場は、地獄の安定志向、護送船団ムードです。
私は、教育に携わるものとして、危機感を感じ...続きを見るている中、この連載が始まったのは、実にリアルで期待をしました。
東カレで、東大の松尾先生と対談した記事を拝見しましたが、松尾先生も警鐘を鳴らされていたと記憶しています。
長文失礼しましたが、改めて、いまの若者は、安定志向、リスク回避型がマジョリティーで、
そんなのいつの時代?と言っている人は、現実が見えてないと思います。